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【ウェブアクセシビリティ座談会 No.3】ウェブアクセシビリティって誰がやるの?

2021年03月05日

くらげ
サニーバンクのくらげです。聴覚障害と ADHD の当事者です。この連載はアクセシビリティとはなにかをお話しながら理解を深めていこうという企画です。前回に引き続き、4人でアクセシビリティについて話し合っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。まず、自己紹介からいいでしょうか?
よっこ
サニーバンクのアクセシビリティ担当のよっこです。前職では自治体広報担当課でウェブアクセシビリティ向上に取り組んでいました。「みんなで一緒に楽しみたい!」がアクセシビリティのメインテーマです。
伊敷
伊敷政英(いしきまさひで)です。先天性の視覚障害でロービジョンと全盲の間を行ったり来たりしています。サニーバンクでは、主にアクセシビリティ関連のアドバイザーをしています。趣味は音楽で、T-SQUARE、小島麻由美、上原ひろみ、X JAPANなどのファンです。最近ハマっているのはsnack time(スナックタイム)竹内アンナ吉澤嘉代子です。
寺島
漫画家の寺島です。発達障害のある2人の子どものママで自身も強いASD傾向があります。このコラムではイラストやアイコンも担当しています。普段はWeb制作会社でパートをしているので、この中では唯一の制作側という事になりますね。よろしくお願いします。
くらげ
さて、前回はウェブアクセシビリティを行政や民間企業が行わなければいけない理由をガッツリ話しあったのですが、今回は伊敷さんから関係者からウェブアクセシビリティについて誤解しているような発言を聞いたり、おかしな質問を投げかけられたという経験から色々語っていただきたいと思います。
伊敷
僕はこれまで17年間ウェブアクセシビリティに関わってきたんですけど、本当にいろんな質問や疑問をいただきました。今回はそのなかで「よくある質問」についてお話できれば、と思っています。

公的機関では福祉の部署だけがやればいいの?

よっこ
では、まずは私も以前関わっていた公的機関の方からいただいた質問について教えてください。
伊敷
そうですね。公的機関の方でも、この仕事をはじめたころは「ウェブアクセシビリティは福祉に関する部署だけでやればいいんじゃないですか?」という問い合わせが頻繁にありましたね…(遠い目)
寺島
ちょっと先に質問していいですか?それはどういう意味での問い合わせなんでしょうか…?公的機関のホームページがあったとして、福祉に関する部署の人が頑張って、全部の部署のアクセシビリティの改善を担当すべきという事ですか?それとも、福祉に関するページ以外は特にウェブアクセシビリティに対応してなくても構いませんよね?という意味ですか?
伊敷
後者ですね。ウェブアクセシビリティに対応するのは福祉関連のお知らせが載っているページだけでいいだろうという意味です。
寺島
本当に意図が理解できなかった(笑)
伊敷
ありえないですよね。でも、本当に多かったんですよ、この手の質問。障害のある人は障害者福祉に関するページしか見ないのだろうという誤解からきたのかもしれません。でも、視覚障害者もゴミを自分で捨てますし、介護をすることもありますよね。引っ越しもすれば、子育てもします。そういうときに自治体のサイトに載っている情報がわからないのは困りますよね。
くらげ
私も日常生活の上で公的機関のサイトをよく利用します。聴覚障害者も納税しますし、引越し手続きもすれば、車を買うのに印鑑証明を取ったりもします。障害のない人と同じ情報が必要なんですよね。
伊敷
僕も最初は質問の意図がよくわからなかったのですが、よくよく話を聞いてみたところ、「ウチの部署は特になにもしなくていいですよね?」という確認の意図もあったのではないかと思います。
よっこ
新たな仕事が増える!と警戒されてしまった感じですかね。
くらげ
そういう時、「はい、やらなくていいです」というんですか?
伊敷
絶対に言いません(笑)「はい、やってください」と強く言います。つまり、この質問は「ウェブアクセシビリティは障害者のために特別にやらなければいけないこと」という誤解が根本にあったんだと思います。
くらげ
ですよねぇ…。ウェブアクセシビリティについて「誰がやらなきゃいけないのか・意識しなきゃいけないのか」といったら「ウェブの構築や更新に関わる全員」だし、広く言えば「行政全体」ですよね。
伊敷
おっしゃる通りなんですが、これは「全員が取り組むべき」と捉え直してもらうことがいかに難しいかということでもあるんですよね。公的機関の職員さんですら、自分が管理しているウェブサイトを、視覚に障害のある人が利用しているということを認識できていない場合が多かったですからね。だから、僕がアクセシビリティ関連の研修やセミナーでお話しする時には必ず「視覚障害のある僕も、ゴミを捨てるし、引っ越しします。今は独身だけど、この先結婚して子どもができるかもしれない」と具体例を上げて話すんです。そうするとわかってくれる人も大勢出てきますよ。
よっこ
私も公的機関で働いてきて、じっくり話をすると、アクセシビリティについても理解してくれる職員さんが多い印象でしたが、実際身近に障害者がいないと「障害者」の具体的な生活って想像できないと思います。
伊敷
想像力の問題かもしれませんね。特に、ウェブサイトを更新している部署などでは、地域住民の誰が読むんだろうとか、情報が届いてない人はいないのだろうか、とかを意識しながら仕事をしてほしいなと思います。

これだけは避けたいPDFの作り方

寺島
サイト全体の改修はすぐには難しくても、ブログの更新や、行政のサイト上でのお知らせの際に配慮をすることは出来ると思います。例えばどのようなことをすると助かるとか、具体的なお話はありますか?
伊敷
例えば、公的機関だとPDFで情報を発信することも多いと思うのですが、その際に一番困るのは、紙の資料をスキャナーでスキャンしてそのままPDFにしてしまうというものです。このようにして作られたPDFは人間が見ると文字情報が入っているように見えますが、スクリーンリーダーなどでは1枚の絵としか認識できません。そのため、このようなPDFを開くと「この文章は空です」のように通知されて、内容を把握することが一切できなくなります。アクセシブルなPDFを作成するのは少しハードルが高いのですが、まずこれだけは避けて欲しいところです。
寺島
あー!なるほど、確かに画像としての文字は「そういう模様」ですから、読み上げソフトでは読んでくれませんね。PDFの下にテキストで必要な情報を書いておく必要があるんだ!でも、それぐらいでしたら現場の裁量で出来そうですね。
よっこ
私が公的機関にいたときは、イベントのチラシとかパンフレットなど、アクセシブルでないPDFファイルをホームページに載せないといけないことがありました。PDFを掲載する時は、掲載したPDFファイルに載っている最低限は伝えないといけない内容やお問い合わせ先などを必ず本文テキストとして提供するようにお願いしていました。また、お問い合わせ先や担当課については基本的に全てのページに記載することがルールになっていました。
くらげ
そういうことが徹底されたら素晴らしいですね。
伊敷
僕がウェブアクセシビリティの仕事を始めたころは、今みたいにページの下の方に担当課や問い合わせ先が記載されているなんてことはそれほど多くなかったですね。今までのやりとりをみても、僕がアクセシビリティの仕事を始めた頃と、よっこさんが公的機関に勤めていた数年前とでは公的機関職員のアクセシビリティや多様性に対する意識が変わってきているのかもしれませんね。

「障害者はうちの商品使わないから…」ってほんと?

くらげ
では、ここらで一度民間企業の話に切り替えられば、と思うのですが、民間からも「誰が対応すればいいのか?」という質問は多いんでしょうか?
伊敷
民間企業はより露骨ですね。ウェブアクセシビリティ診断の営業もするんですが、「うちに障害者のお客さんはいないから」とか「障害者をターゲットにした商売をしていないので不要です」と断られることが多いです。酷いところだと「障害者がサイトを見られるようになったら障害者が店に来るから困る」と言われたこともあります。
くらげ
ちょっと何を言っているかわからないですね(笑)
寺島
ただ、たしかに障害者がどれくらい顧客にいるとかいう数字は単純には出てこないというのはあります。障害のある方がネットショップなどで買い物するとき「自分は障害者です」と言って買うわけではないですからね。もちろん、「アクセシビリティは不要」という意識を変えたいとは思いますが、中小企業の経営者としては、それだけ予算をかけてウェブアクセシビリティに取り組んで、リターンがちゃんとあるのか?というところを心配してしまうんじゃないでしょうか。
よっこ
公的機関の場合は、営利関係なく全ての住民へ情報が伝わるようにする必要がありますが、民間企業はどうしても採算を考えないといけないので、ウェブアクセシビリティのように効果が見えにくいものは後回しになってしまうのかもしれませんね。
伊敷
基本的に、全部のサイトがアクセシブルになっていることを希望したいですね。

写真やバナーだけでは情報が伝わりません

寺島
民間企業の場合にまずはここから取り組んで欲しい、というようなことはありますか?
伊敷
いくつかあるのですが、とにかく画像での情報をどうするかというのが大きな問題になります。
寺島
ネットショップなどに画像を掲載するときはどのような点に気をつければいいんでしょうか?altをつけるとか、そういう技術的なことはやっているとは思うのですが。
伊敷
いやそれがあまりされてないんですよ。今寺島さんが仰った「alt」というのは、画像に対する「代替テキスト」のことですね。これは、画像と同等の役割を果たすテキストのことで、例えば写真に写っている商品の説明やバナーに記載されたセールの告知などを、文字で表したものです。スクリーンリーダーユーザーがネットショップで買い物をする時に、写真やバナーは見えないので、スクリーンリーダーでこの代替テキストを読んで理解しています。また、何らかの原因で画像が表示されない場合にこの代替テキストがかわりに表示されます。
よっこ
バナーであれば何かしらテキストがのっていることも多いと思うので最低限そのテキスト情報は代替テキストに入れて欲しいですよね。
くらげ
代替テキストって誰が準備すればいいんですかね。
伊敷
基本的にはデザインの段階で準備して欲しいですが、実際にウェブサイトに掲載する段階で考えることが多いですね。商品写真であればその説明を文章にしたもの、バナーであればよっこさんが言うように、そこに記載された文字情報をテキストにおこしたものを準備して欲しいです。
寺島
これはデザイナーの意見なのですが、写真やバナーのテキスト情報を「テキストデータ」として持っていない場合が結構あるんですよ。私自身は直接画像作成ソフトで作業してしまう事も多くて…。
伊敷
そうなんですか!?メモもないんですか?
寺島
クライアントや上司が言っていることを手でメモして、それをコピー(文言)にまとめて、イラストやチラシを作るソフトに直接タイプして画像にするんです。というか、この座談会に入るイラストも、文字原稿なしでいきなり私が手で描いてるじゃないですか。デザイナーの仕事って「クライアントが用意した文字を絵にする」のではなくて「もやもやっとクライアントが伝えたいことを絵にする」なので。
伊敷
いきなり画像作成ソフトで作るんですか。しかし、どんなツールでサイトやコンテンツを作るにしても、文字情報は必ず入れてくださいとお願いしたいですし、テキストが存在しないなら、一緒に効率的に読めるようにするやり方を考えていくようにしたいですね。
寺島
そうですね、例えば、画像が出来てからその情報部分を抜き出してテキストにして、画像に添えてテキストとして挿入するなどはさほど難しくないと思います。
よっこ
確かに、この座談会の寺島さんのイラストの代替テキストは、原稿が出来上がって、ウェブページにする時に伊敷さんと私とで考えていました。素敵なイラストなので、私たちにとってはそれがまた楽しい作業なのです。この場合は画像も少ないし、私たちも座談会に参加しているのでいいのですが、実際の制作現場では、画像の点数も多いですし、デザインする人とウェブサイトにする人が別の場合が多いと思うので、デザインの前の段階で代替テキストが準備できている方がよさそうですね。

みんなの力でアクセシビリティをみんなの為に:ウェブサイトを作る人・更新する人・使う人。みんなが取り組むことでウェブアクセシビリティはどんどん向上していく。

視覚障害者もカメラを使うし聴覚障害者も電話を使う

くらげ
公的機関の話と同じで、私たちも民間企業のサイトを使っているんだということを知ってもらわないとですね。
伊敷
こは当事者が声を上げていかないとだめなところかもしれないです。昔、あるセミナーでお話しした後に、メーカーのカメラ部門のデザイナーさんから「視覚障害のある人もカメラを使うんですか?」と聞かれたんです。目が見えない人が写真を撮るなんて想像できなかったんでしょうね。弱視の人の場合、近づいても見えないものをとりあえず写真に撮っておいて後で目を近づけたり拡大したりしてじっくり見ることもあります。全盲の人の場合も、友人や家族にあとで教えてもらうために写真を撮って記録しておくということもあります。そのことをお伝えしたところ、そのデザイナーさんからヒアリングしたいという要望をいただいて、グループインタビューという形で実現したことがあります。当事者ができることは少ないかもしれませんが、製品やサービスを使っていることを伝えると「そこにニーズがある」と気づいてアクセシビリティにも意識が向いていくと思います。
寺島
カメラといえば、私も空が白くけむってくらくらするときにこれは光化学スモッグが出ているのか、明るすぎてハレーションを起こしているのか確かめるためにカメラで空を撮ったりしますよ。青空が写っていれば明るすぎて自分の感覚が惑わされているんだなと判断できます。
くらげ
それもカメラメーカーは想定してない使い方でしょうね。発達障害のある人は感覚が一般の人と違っていることが多くて、自分の見えているもの、感じていることが本当なのか分からなくて不安になることがあるんです。
よっこ
発達障害のある人に感覚過敏がある人もいるときいたことがありますが、光に対する過敏があるとそういう感じになるんですね。これも「感覚過敏」という言葉からは想像できないことでした。
くらげ
似た話だと、聴覚障害者も携帯やスマホの通話機能や録音機能は使わないと思われがちですが、実際には当たり前に使います。緊急時に近くにいる人にお願いして電話をかけてもらったりしますし、音を録音して後で家族などに聞いてもらって内容を教えてもらうこともあります。
よっこ
そんなふうにカメラやスマホを使っている人がいるなんて、想像できないかもしれません。知っているか知らないかで、提供できる商品やサービスに違いが出てきちゃいますよね。
伊敷
知っているか知らないかというより「自分とは違う属性の人をどれだけ想像できるか」とか「話を聞いてみようとする行動力」が大事なのかな、と思います。
寺島
そうですね。これから高齢者の人もどんどん増えていくので、アクセシビリティを必要とする場面はどんどん増えていくでしょう。民間の会社や施設も「うちの商品やサービスは障害とは関係がない」とか「大きな顧客層ではないから」という他人事のような態度では立ち行かなくなる、という時代も遠からず来るのではないでしょうか。
よっこ
私たち自身も、突然の事故で怪我をしたり、事故じゃなくても老いていって目が見えづらくなったり耳か聞こえにくくなったりするわけですよね。そういう自分の将来の変化に対する「想像力」というのも、アクセシビリティ向上に取り組む意義かもしれませんよね。
くらげ
「想像力」を働かせると「他人事」というものが少なくなるんじゃないかと思いますね。私も改めて「アクセシビリティ」というものが、誰かが一人で行うことではないな、ということを感じました。ありがとうございました。さて、次回は「ウェブアクセシビリティのデザインによくある誤解」について話し合いたいと思います!お疲れさまでした!
伊敷
お疲れさまでした!

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