【恭加の「 THEATRE for ALL 」感想文】23「ナオト、いまもひとりっきり」
こんにちは。恭加 (きょうか) です。
恭加がご紹介する、バリアフリー オンライン劇場THEATRE for ALLの作品。
第23回目は 「ナオト、いまもひとりっきり」の感想です。
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この作品は、「ナオトひとりっきり」(2015)の続編である。
「ナオト」は原発事故により全町避難になった福島県富岡町に動物たちと一人で残り続けた松村直登さんのこと。
「ナオトひとりっきり」はナオトさんを追った映画であり、この作品は「ナオトひとりっきり」の続編として、さらに7年間を追い続けたドキュメンタリー映画だ。
原発事故により避難を求められたが、ナオトさんの高齢の両親は避難を拒否し被災地から20キロ圏内にある自宅に残ることになる。
その数日後、両親は親戚からの説得により避難をすることになるが、被災地には飼い主に置いて行かれた犬や猫がたくさんいた。ナオトさんは
「自分が避難すると動物たちが餓死する」と思い、被災地に残ることを決意。
福島原発から20キロ圏内の家畜について、政府から殺処分の命令が出ていたが、殺処分したくない畜主はナオトさんに預けた。
そのため、ナオトさんは犬や猫だけではなく、牛やダチョウ、ニワトリにもエサをやる生活をしていた。
そんなナオトさんの2013年から2020年までの7年間の日々の記録である。
この作品では動物の命をメインテーマに、7年という月日が流れて町と人の変化の様子を撮っている。
一番印象に残っているのが、牛舎でのシーンだ。
その牛舎にはたくさんの牛の骨が転がっていた。
ナオトさんによると、100頭以上の牛が、牛舎に繋がれたまま餓死した。
「原発の被害者」だとナオトさんは語っていた。
人間の都合により生まれ、いざ避難が必要となれば動物は放置して人間だけ避難。
餓死しなかった動物も、政府の命令によりほぼ殺処分された。
「20キロ圏内にいた家畜は商品として出荷できず、経済の役に立たない、価値のない動物だから殺された」
とナオトさんは語っていた。
畜主お世話をできない動物はエサを食べられず、やがて餓死してしまう。
それなら苦しまずに殺した方がいいという考え方もある。
答えが無いからこそ難しい選択であり、命についてとても考えさせられる作品だった。
それと同時に見ていて何度も胸が痛くなった。
人によって飼われ、人によって育てられ、人が不要になれば殺される。
動物よりも人が偉いと誰が決めたのだろう。
その決まりにより、人は生きていられるのかもしれないが、動物の命を軽く見ているようにも思える。
ナオトさんは、動物と人を対等だと思っている。
そんなナオトさんだから、被災地に残るという選択をしたのだと思った。
避難区域だった富岡市も2018年には小学校や中学校が再開し、人が少しずつ戻ってきた。
最初はだれもいないこの町で、最後はよその誰かがこの町を作っていく。
「元の町に戻るにはまだ時間がかかるが、50年~60年たったら歴史の一つの出来事みたいに、
こんなことがここであったんだと語り継がれるようになるのかもしれない」
とナオトさんは語った。