【恭加の「 THEATRE for ALL 」感想文】27 もうろうをいきる」
こんにちは。恭加 (きょうか) です。
恭加がご紹介する、バリアフリー オンライン劇場THEATRE for ALLの作品。
今回は 「もうろうをいきる」をご紹介します。
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盲ろう者(もうろうしゃ)とは目と耳に障害を持つ人のことだ。
光と音の無い世界にいる人が日本には少なくとも1万4千人居る。
この作品では、そんな盲ろう者の人々の生活を映している。
盲ろう者といっても、耳は全く聞こえないが目は少し見えるという人から目も耳も全く見えず聞こえずの人等、いろんな人が居る。
この作品でも、いろんな盲ろう者の生活を追っている。
その中でも特に印象的だったのが、25歳の少年川空さんである。
彼は「ゆくゆくは結婚をし、子供の為にちゃんとお金を稼ぐ自立した自分になりたい」と語っていた。
そんな川空さんはアイラブ作業所というところで働いている。
作業所で一つ3円の箱を折ったり、お菓子を作って売ったりしている。
だが、そこでの賃金は一日たったの400円だ。
作業所の所長は、仲間の人たちの工賃をあげるために
「いろんな仕事を探したいし特に盲ろうの人たちのできることが何なのか
どんなことができるのか職員も一緒に考えていきたい」と語っていた。
職員の人と川空さんが楽しそうに冗談を言い合っている姿が映りとても暖かい作業所だと思ったが、賃金が1日400円では自立した生活を送ることは不可能だと思う。
以前、THEATRE for ALLの他の動画でも障害者の賃金が安いことに衝撃を受けたのを思い出した。
確かにできることが限られていると賃金は安くなってしまうのかもしれないが、
所長のいう通り本人のやりたいことは何かを尊重したうえで何ができるのか、いろんなものや職業に触れる機会を作りながら探していくべきだと思った。
障害者の賃金が安すぎることは社会全体のこれからの課題だと思う。
障害学やバリアフリー研究科の第一人者である全盲ろうの福島さんは、
「今の情報化社会、IT社会というものは『見ると聞く』という感覚で成り立っているわけでそこから見ると聞くを取ると何も残らない。
だがその何もないところに2万人近くの人が居ることをわかってほしい」と語る。
情報が無いと自分がどうしていいのかさえ分からなくなる。
実際にこの作品も視覚と聴覚に訴えるメディアなわけで盲ろう者が直接的にキャッチできないというジレンマがある。
そんな中でどうやって盲ろう者の人生を意味のあるものにしていくのかと考えると、
やはり人の力で、具体的に何ができるのか考えてほしいと語っていた。
知識や情報が優位となる情報化社会で盲ろう者は健常者と比べて情報を収集できる場所が圧倒的に少ない。
目が見えず耳も聞こえずとなればテレビやラジオ、インターネットから情報を仕入れるのは難しくなる。
盲ろう者は誰かに通訳をしてもらい情報を収集する。
だがパソコンやインターネットを活用するIT社会では誰かを経由しないと情報を仕入れることが難しく取り残されてしまいそうになると思った。
また、先天ろうの女性である川口さんも印象に残っている。
川口さんは目にも障害があり、少しずつ目が見えなくなってきてるという。
今は一般企業の人事部として働き、まだ見える間に海外や沖縄など、どこか遠いところに行って生活してみたいと語っていた。
また、よく盲者は盲者でよかったと言っている人が多いが自分は耳が聞こえるように生まれたかったと話していた。
その言葉を聞いて胸が締め付けられそうになった。
障害者のことを「可哀そう」とは決して思いたくないが、もし川口さんが耳が聞こえて目も今後ずっと見えていたら、休日の一番の楽しみと語っていた能や歌舞伎をずっと見ることができるのにと思った。
川口さん自身も見えているうちに休日いろんなものをいっぱい見たいと語っていた。
盲ろう者の生活をみていると決して不幸そうには見えないと語っていたが、この作品に出てくる盲ろう者は、
やりたいことを見つけていたり、好きなことがあったり、周りの人に囲まれて幸せそうにしていたり、健常者に負けないくらいちゃんとした日々を送っていた。
この作品で追っている盲ろう者は一部であり世の中にはもっといろんな盲ろう者がいるが、障害者と健常者お互いがそれぞれを理解し、一緒に幸せになれる世の中でありたいと思った。
この作品は日本語字幕や日本語字幕と音声ガイド、英語字幕、英語字幕と英語音声ガイド、韓国語字幕がある。
海外の方や視覚障害者、聴覚障害者も見ることができる。
音声ガイドは、話している人の表情まで説明をしていて、とても想像がしやすいと思った。