【恭加の「 THEATRE for ALL 」感想文】34 「絵の中のぼくの村」
こんにちは。恭加 (きょうか) です。
恭加がご紹介する、バリアフリー オンライン劇場THEATRE for ALLの作品。
第34回は「絵の中のぼくの村」をご紹介します。
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この作品は、第46回ベルリン国際映画祭で銀熊賞に輝くなど国内外で高い評価を受けた、一卵性双生児である絵描きの兄弟の少年時代の物語だ。
征彦と征三は、今も心の奥深くにある少年時代の体験を初めての2人の合作で一冊の本にすることになる。
いい思い出も、マイナスな部分も、たくさんの思い出が詰まっているエッセイを原作に作られた作品であり、誰もが持っている懐かしく輝かしい子供時代の記憶だ。
二人が描いた懐かしい記憶の絵から昭和23年の高知県の田舎の村に飛び、物語は始まる。
二人は子どもの頃、高知県の田舎の村で数年間を過ごした。
少年時代、いたずらっ子の双子で有名だった。
よその家の里芋の苗を刈ったり、畑を荒らしたり。
だが、そんな二人に対して母は怒るのではなく
「気持ちよかった?お母さんもやりたかった」と言っていたのがとても印象的だった。
川に釣りに行っているときに流された麦わら帽子を追いかけて溺れそうになる征彦を、
征三が何も躊躇わずに助けに行ったり、二人とも日常的にいじめを受けていたがお互いを助け合っていた。
先生からの体罰や、理不尽ないじめ、決していい思い出だけではないが
なまずを捕ったり、鳥を捕ろうとしたり、
特に大きくストーリーが動く作品ではなく、淡々と日常を描いた作品である。
だが、ところどころで「仲間外れ」が気になった。
舞台は高知県の田舎の村だ。
貧乏な同級生”セイジ”を家に入れようとすると母から
「あの子だけは入れてはダメ」と言われる。
セイジは自分でわかっていて「やっぱりそうか」とすぐに納得する。
それからセイジは学校に来なくなり、その後どうなったのかもわからない。
二人の過ごした小さな村は、残酷な村だった。
作者の意図なのかはわからないが、私はこの作品の伝えたいことは部落問題ではないかと感じた。
少年時代からずっと二人を見守っている3人の老婆や妖怪を登場させ、
実話ではあるがファンタジーの様な作品になっている。
この作品はオリジナルの他に日本語字幕、音声ガイド+日本語字幕がある。
話している内容はもちろん、今誰が話しているのか話している人の名前が表示されるのでわかりやすい。
登場人物を「これ誰だったっけ?」と思う事があるので健常者にもわかりやすい字幕だと思う。
また、音声ガイドでは人物の動きや場面等の説明をナレーションが話してくれる。
そしてUDキャストに対応している作品でもある。
映画のバリアフリー化は新作映画に限られていて、過去の名作は視覚障害者や聴覚障害者が鑑賞できないことが多いが、
この作品は1996年の作品でありながら監督や原作者のバリアフリーへの理解をもとに、バリアフリー版の制作が進められ、
視覚障害者、聴覚障害者、外国の方にも楽しんでもらえるアクセシビリティに配慮された作品になった。