【恭加の「 THEATRE for ALL 」感想文】37 「片袖の魚」

2022年11月7日

片袖の魚イメージ。女性の横顔。「トランスジェンダーのささやかながらも確かな一歩を刻む34分」「バリアフリー配信あり。まるっとみんなで映画祭」

こんにちは。恭加 (きょうか) です。

恭加がご紹介する、バリアフリー オンライン劇場THEATRE for ALLの作品。

第37回目の今回は片袖の魚をご紹介します。

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この作品は、トランスジェンダーの女性を描いた作品である。


主人公のトランスジェンダーの女性、新谷ひかりは、

会社の同僚や上司、同じくトランスジェンダーの友人等理解者に恵まれ生活しているが、たまに周囲の人々との壁を感じながら生きている。

出張で地元に帰省した時、恋心を抱いているであろう男性に連絡を取り、その男性と会う事になる。

今の自分を知ってもらうために気合を入れて待ち合わせのお店に向かうが、そこには彼だけでなく同級生がたくさんいた。また彼はもうすぐ子供が生まれることも告白する。

ずっと過去に縛られていたひかりは、最後に男性にサッカーボールを投げつけ、吹っ切れたようで軽やかな足取りで帰宅する。

縛られていた過去から解き放たれたような、大きな一歩を歩き出す。


仕事の取引先でトイレを貸してくださいというと、男性なのか女性なのかを考える間があり、

「みんなのトイレは上にあります。」と言われたり、男性なの?女性なの?と聞かれたりしていた。

純粋に無知であることが差別に繋がるところに生々しさを感じた。

悪意を持って発した言葉ではないのが、心に刺さるものがあると思う。

だが、言葉を発した本人は、むしろ気を使って発した言葉もあるが、

その言葉が相手を傷つけてしまう、そんなすれ違いもあるんだと感じた。

日常に起こる悪意のない差別を、細かく描いていた。


またこの作品の主人公、トランスジェンダーの女性役を演じたのは

トランスジェンダーであるモデルのイシヅカユウさんである。

日本ではまだトランスジェンダーを題材にした作品が多いとは言えないが、こうやって当事者の表現者が演じることにより、まだまだトランスジェンダーについての理解度が低い社会や、生活している当事者に、何か影響を与えられるのではないかと思った。


水槽の中を泳ぐ魚が出てくるシーンがたくさんあり、

私たちは社会と言う水槽の中で生きている一匹の魚であり、トランスジェンダーのひかりが

生きにくい水槽を作っているのは周りにいる私たちなのだと感じた。

また、水槽を使った演出は物語とリンクしていて自然と引き込まれた。


トランスジェンダーではなくても、男女の中にも無意識の差別や偏見を感じることが日常でもあり、

なぜ今この人は私にその言葉を投げかけたんだろうと疑問に思ったり、時に傷ついたり不快に思う瞬間はあって、

性別の前に人間であり、人の資質が人格や人となりで判断される世の中になればいいのにと強く思う。

この作品はオリジナルの他、音声ガイドや日本語字幕、英語字幕、

ギリシャ字幕にも対応している。

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