【恭加の「 THEATRE for ALL 」感想文】49 「チロンヌㇷ゚カムイ イオマンテ 」
こんにちは。恭加 (きょうか) です。
恭加がご紹介する、バリアフリー オンライン劇場THEATRE for ALLの作品。
第49回は「チロンヌㇷ゚カムイ イオマンテ」 です。
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チロンヌㇷ゚カムイ イオマンテ
北村皆雄
この作品は1986年当時75年ぶりに北海道屈斜路湖畔で行われたアイヌ民族の知られざる祭祀の映像であり、
失われつつあるアイヌの伝統文化を後世に遺すドキュメンタリー映画である。
「キタキツネのイオマンテ」と呼ばれるその祭祀は、2年間かけて我が子同然に可愛がってきたキタキツネを神の国に送り返す儀式である。
アイヌでは自然は全て神様だと考えれれている。
神の国と人間の国は分けられていて、神の国に住んでいる者が人間の世界に行きたいと願った。
すると神様は毛皮と肉を捧げるという条件の代わりに人間の国に行くことを許可した。
そのキツネは人間に我が子同然に育てられ、2年後たくさんのお土産が用意され神の国に送り返す為に殺される。
肉と毛皮を脱ぎ、霊が神の国に贈られる。
皆で育てた子を神の国、つまり父母のいる国にお返しすること、それがイオマンテという。
私たちが普段食べているものは色々な命をいただいて生きているということを考えさせられる映画だった。
きつねのツネ吉の心情を表したナレーションが入っていたが、ツネ吉は神の国に帰る為に殺されることを喜んでいるようなナレーションだった。
だが、実際に神の国に贈られる前夜祭、柵の中に入れられているツネ吉は
柵から顔を出し逃げたそうにしているように見えた。
また、殺される直前、刀を持った人がツネ吉の前に現れ、他の人が柵の周りを囲むと
ツネ吉はそれまで比較的おとなしかったが、いきなり柵の中をうろうろしていて、怯えているように見えた。
人が勝手に作り上げた言い伝えを動物に押し付けるのは心が苦しく、殺されるシーンはどうしても観ることができずに飛ばしてしまった。
自然や食べ物を大切にし感謝しているアイヌの伝統は素晴らしいと思うが、
動物が自ら死を望んでいるという考えを肯定することは難しいと思った。
前夜祭や当日には歌や踊りが神の国に帰るキタキツネの為に贈られた。
映画を観た後にイオマンテについて調べていたところ、
当時取材をしていた方の記事を見つけた。
当時、取材の時にみた踊りや歌と、2020年にネットに流れていた歌や踊りをみると
どこか違和感があったと書いてあった。
私もアイドルをやっていた頃、昔先輩方がやっていた曲の振り付けが、
どんどん別のものに変わっていっていることが問題視されていた。
教える人が変わったり、当時踊っていた人がどんどんいなくなると、
100%忠実に踊れる人が居なくなり、似ている別物の踊りになると聞いたことがある。
もっと歴史の長い伝統文化では、全く同じものをずっと受け継ぐことは難しいのだろうなと思った。
この作品はイオマンテについて子どもでもわかるくらい
わかりやすく説明されていたので、失われつつあるアイヌの文化を広める映画だと思った。
アイヌの人は狩りをすることで生きてきた民族だからこそ、アイヌの人々命の向き合い方があるのかと感じた。