【恭加の「 THEATRE for ALL 」感想文】43 「眠れない夜の月」
この作品は人形アニメーションであり、短編ファンタジー作品だ。
ある少年が眠れない夜に父と散歩をしていると、月がなかなか沈まなかった。
そこで父が少年に
「眠れない夜は長く感じる。それは月が高い木に引っかかって回らなくなっているからだ。」
と話す。
その日は無事に月が沈み夜が明けたが、次の日少年の家に月のリスが現れ,今日も月が木に引っかかっていることを知る。そこで少年はリスと一緒に木に引っかかった月を元に戻すため、時間が止まった夜の森へ冒険に出る。
この作品に出てくる人形や家や森や小物は手作りであり、エンドロールで実際に作っているところが映されている。
少年の家の中はもちろん、森も繊細に作られていてあまり映らないものでもこだわっているのを感じたし、手作りに見えない程のクオリティに驚いた。
人形の細かい表情や動きを丁寧に表現していてかなり凝って作っているんだろうなと思った。
また、この作品はストップモーション作品のため何度も微妙に角度を変えコマ撮りしていた。
気の遠くなる作業であり、たった30分程の作品だがそこには製作者が膨大な時間と労力を掛けて作られた作品なんだろうと感じた。
どうやって作られた作品なのか観ることができるエンドロールはかなり見どころだと思う。
眠れない夜は長く感じてナイーブな気持ちになったり、落ち込んだり、鬱状態になりやすい。
そんな時、今は月が木に引っかかってるんだなと思うとほっこりするし心が温かくなると思う。
一見子供向けの作品であるが、忙しい毎日を過ごす人が眠れない夜にこの作品を観てほっこりしてほしいと思う。
作品の世界観もロマンティックで優しく、夢の世界をみている様なピュアな作品である。
散歩をしたときにお父さんから教えてもらったことを、冒険中に月のリスに得意気に教えている少年が純粋でとてもかわいく、私のお気に入りのシーンだ。
この作品は、英語字幕もあるので海外の方も楽しんでもらえる作品だと思う。
一人暮らしを始めて眠れない夜があったり、夜遅く家に帰る道で月はなんだか優しい気持ちにしてくれたり、
時に沈んだ気持ちを包んでくれる。人類の営みの根源である太陽とは対照的に心に優しく寄り添ってくれている気がする。
きっとこれから月を見るとこの物語を思い出してその度に優しい気持ちにしてくれると思う。心のどこかでずっと覚えていたいと思う心温まる素敵な作品だった。