【恭加の「 THEATRE for ALL 」感想文】第62回「マラー/サド(マルキ・ド・サドの演出のもとにシャラントン精神病院患者によって演じられたジャン=ポール・マラーの迫害と暗殺)」
こんにちは。恭加 (きょうか) です。
恭加がご紹介する、バリアフリー オンライン劇場THEATRE for ALLの作品。
第62回は「マラー/サド(マルキ・ド・サドの演出のもとにシャラントン精神病院患者によって演じられたジャン=ポール・マラーの迫害と暗殺)」 です。
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この作品は、フランスのシャラントン精神病院に収監されているマルキ・ド・サド侯爵が、患者たちと、フランス革命指導者であり、後にシャルロット・コルデーにより浴槽で刺殺されるジャン=ポール・マラーのドラマを描くという設定の劇である。実際に精神障害や社会からの疎外を経験した俳優達が、革命や人間としての自由を表現する。
最初にこの役は誰が演じて、この人はどんな病気を患っているのかを1人ずつ説明する。
今回のヒロインは、強い眠気を伴う病気であると話していた。
最初の説明のとき、「さて彼女はちゃんとセリフを覚えているのだろうか」という説明があり、実際物語が始まってもずっと眠たそうにきつそうにしていて、果たしてこの作品は成立するのだろうかと思ったが、いざそのヒロインのセリフの番になると、いきなり歌い始め、先程まで眠たそうにしている人と同じ人とは思えない程素晴らしく圧倒された。
この作品には日本との共同制作であり、東京・浜松・名古屋・大阪・仙台の精神障害者当事者および、精神保健領域で従事する医療職および福祉職の方も参加している。
舞台となる精神病院の病棟には多くの患者がいて生活している。
そこに医院長のインセッラが現れて舞台の説明を始め、この作品はかの有名なマルキドサド公爵による「ジャンポールマラーの迫害と暗殺」であると告げると患者たちは一斉に拍手をする。
そして今度は男が立ち上がり「それではみなさん参りましょう18世紀のフランスへ」と登場人物の紹介を始め物語が始まる。
と、いきなり舞台は日本の大阪へそして浜松へと変わり、なんだ?と思っていると再びボローニャへと戻る。
全体的にフランスジョークとでも言うのだろうか独特な語り口で物語は進んでいく。
患者たちがマラーを持ち上げ私たちを救ってくれと歌う。
ちなみにこの舞台の俳優たちは実際に精神障害や社会からの疎外の経験者で構成されて舞台の中の革命と精神病当事者の世界での葛藤を重ねている。
舞台の先端には鉄格子があり観客たちはその鉄格子越しに舞台を観ている。
舞台中盤俳優たちが「私たちは自由が欲しいだけだ」と鉄格子に詰め寄る場面では観客たちから拍手がおきる。
歴史としても事実として認知されていることが伝わってくる。
時に俳優たちのセリフや行動が演技なのか素なのか分からない部分もあり逆にそれがリアリティを高めていたりもするし、逆に歴史や文献を知らずに観ていると分からない部分もあったがこういう作品として捉えて観るとそこまで気にならないかもしれない。
この作品は、日本語字幕の他に、演劇手話通訳でも観ることができる。