【恭加の「THEATRE for ALL 」感想文】第69回「グスコーブドリの伝記」
こんにちは。恭加 (きょうか) です。
恭加がご紹介する、バリアフリー オンライン劇場THEATRE for ALLの作品。
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グスコーブドリの伝記 SPAC-静岡県舞台芸術センター
この作品は演出家・宮城聰が宮沢賢治作品を初演出した作品であり、等身大の人形を駆使し、変幻自在の劇世界を追求する。
「グスコーブドリの伝説」では火山島を爆発させて地球を暖かくしよう、という発想が出てくる。地球温暖化に抗おうとしている現在とは正反対な発想である。
たしかに、昔は寒さとの闘いを強いられてきたという厳しい環境であったのだろう。しかし、いつの世も発想の根底にあるのは「人類の住みやすさ」「暮らしやすさ」なんだな、とも感じた。
冷害で家族を失ったブドリにしてみれば、寒さこそが敵に思えたのだろう。
今、地球が抱えてる干ばつや洪水、豪雨、台風の巨大化等様々な問題も、人間自身が作り出した問題が発端となっているもの多いと思う。
現在、人間が必死になって減らそうとしているCO2。これを減らしていかないと人類も地球も滅亡への道を進むしかない。しかし、100年にも満たない過去には、CO2こそが人類を救う救世主かもしれないと考えられていたのではないか。それを考えると、人類の文明と科学が、地球や地球に暮らす生き物たちの犠牲の上に成り立っていたことを実感して恐ろしくなった。
この作品は、視聴者がもともと「グスコーブドリの伝記」を知っている前提で作られた作品だと思う。グスコーブドリの伝記自体を知らなかった私は1度観ただけでは理解が難しく物語の流れや意味が分からなかったので原作に目を通した後、この作品を再度鑑賞した。
この物語の中では飢饉でひとりぼっちになったブドリの自立への葛藤が描かれている。この世界の人たちは文明や資本主義へ向かっているようにも観て取れる。
天候や気候をコントロールしようとしてみたり、ブドリは人間ではなく地球を救うためにこの世に連れてこられた別の生物なのかもしれないとも思った。
ブドリはたくさんの人との出会いと別れを繰り返し、その度に厳しくとも親切にしてくれる人と出会う。出会った人から信頼を得て、当初何も持っていなかった子供であったブドリは、社会的役割を持つことが出来た。
与えられた場所でどう生きるのかということが大切だと感じた。
バリアフリー字幕ではBGMに使われている楽器が細かく説明されている。これが面白いと感じる人と、物語に集中できないと言う人とに分かれるかもしれない。また、使われている楽器がメタフォロンやカシシ等馴染みのない楽器が使われていたのが印象的だった。
そしてグスコーブドリの伝記は重みがあり考えさせられる作品だが、等身大の人形を駆使していて、世界観がディズニーランドにあるアトラクションのイッツ・ア・スモールワールドの世界観に似てると感じた。
この作品ではオリジナルの他にバリアフリー字幕、音声ガイド、日本語手話でみることができる。THEATER for ALLの公式YouTubeにて無料で閲覧可能である。