【恭加の「THEATRE for ALL 」感想文】第72回「手話と音楽と語りで綾なすライブセッション 〜すきとおったほんとうのたべもの〜」

2024年10月21日

「〜すきとおったほんとうのたべもの〜」トップ画像。舞台上に立つ10人ぐらいの人。楽器を持った人や手話をするひとたち。

こんにちは。恭加 (きょうか) です。

恭加がご紹介する、バリアフリー オンライン劇場THEATRE for ALL新しいウィンドウで開くの作品。

第72回は「手話と音楽と語りで綾なすライブセッション 〜すきとおったほんとうのたべもの〜」新しいウィンドウで開くです。

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手話と音楽と語りで綾なすライブセッション 〜すきとおったほんとうのたべもの〜

ものがたりグループ☆ポランの会


〜すきとおったほんとうのたべもの〜をテーマに、宮澤賢治の3つの作品、「注文の多い料理店序」「注文の多い料理店」「土神と狐」を手話パフォーマンスと生演奏、語りで表現。感覚や文化の異なるアーティストとの協働による重層的なステージ。


『注文の多い料理店 序』は宮澤賢治の心が写したメッセージを2組の語り手と手話パフォーマーのペアが伝える。


『注文の多い料理店』

2人の紳士が山の中で道に迷い、お腹を空かせて立派な西洋づくりのレストランに入っていく。

扉に書かれた注文通りに廊下をずんずん進んでいったその先には・・・?

2人の語り手と1人の手話パフォーマーとのコラボレーション。

バイオリニスト白井崇陽が書き下ろしたオリジナル楽曲で「心象」「風景」を奏でる。


『土神と狐』

一本木の野原に立つ樺の木のところへ土神と狐が交互に遊びに行く。土神はいつもはだしですごく乱暴。

狐はいつも上品な風で滅多に人を怒らせたりしない。樺の木はどちらかと言えば狐の方が好きで、土神の姿を見るといつもぷるぷる震えている。

憧れ、嫉妬、怒り、執着、憎悪。土神と狐と樺の木の様々な感情が渦巻き、衝撃的なラスト。

語り手と手話パフォーマーがペアになって2人で1つの役を演じる。


朗読もあり、手話パフォーマンスもあり、後ろのモニターには字幕のようなものがあり、視覚障害者も聴覚障害者も健常者も、全ての人に平等に見てもらえる作品だと思った。


朗読と手話を両方見ていたが、朗読は声と表情のみで伝えていたのに対して、手話は上半身全てを使って表現していた。言葉だと前後の脈略から予想しないと分からない言葉も、手話だと手振りひとつで伝わることがあり、言葉で伝えるよりも手話の方が伝わりそうだと感じた。


「注文の多い料理店」は中学校の国語の授業でやった覚えがあるが、内容をところどころ忘れていたので、小説として読みたいと思った。当時、「注文の多い料理店」タイトルだけ聞くとどんなお店なんだろう?と思ったが、読み終えると宮沢賢治の想像力に衝撃を受けたのを覚えている。今回改めて見ることができ、犬が亡くなってもお金の損失としか考えることが出来ず愛情を忘れていた都会の2人が、注文の多い料理店を通し犬から助けられる。

お金に執着しすぎた結果、犬への愛情が無くなってしまう2人への神様からの忠告だったのかなと思った。宮沢賢治はこの作品を通して本当に大切なものは何かを伝えたかったのかなと感じた。

そしてバイオリンを弾くのは全盲のバイオリニスト白井崇陽氏である。

白井崇陽氏は全日本盲学生音楽コンクール(現・ヘレンケラー記念音楽コンクール)にて連続第1位を獲得。陸上アスリートとしてもブラジル開催IBSA世界選手権にて3段跳びで5位、走り幅跳びでも8位入賞している。

また視覚障碍者囲碁大会にて、9路盤の部優勝・13路盤の部準優勝と多才だ。

その他にもラジオやYoutubeでも精力的に活動しているそうだ。

白井さんの情報を追っていると視聴覚障害者というインプットされた情報を忘れるくらい、もっと言えば失礼かもしれないけれど自分の置かれている状況を心から楽しんでいるようにすら思えてなんだかとっても勇気をもらった。


最近私もふとした思いつきで自分のライブでドラムを叩きながら歌を歌ってみたところ、もちろん最初は何も出来なかった。「これ叩きながら私歌うの?」と、何度も心が折れそうになったけど最終的にできるようになった。そして、本番で成功した後の達成感はとても心地よかった。

思えば歌もそうだったし、このコラムも最初は手探りだった。

白井さんの情報を追ううちにそんなことを考え始めて私も含めて人間ってそういった負荷を楽しむ生き物なのかなって思ったりもした。

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