【恭加の「THEATRE for ALL 」感想文】第76回「cocoon マームとジプシー」
こんにちは。恭加 (きょうか) です。
恭加がご紹介する、バリアフリー オンライン劇場THEATRE for ALLの作品。
第76回は「cocoon マームとジプシー」です。
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cocoon マームとジプシー
2013年夏、演劇作家・藤田貴大率いるマームとジプシーが音楽家・原田郁子と共に,
沖縄戦に動員される少女たちに着想を得て創作された漫画家・今日マチ子の「cocoon」を舞台化した作品だ。
具体的な言葉は出てこなかったが沖縄のひめゆり学徒隊を連想させる舞台作品だった。
平穏な学生生活が戦争によって死と隣り合わせになる様子を描く。
高校生くらいの少女たちの日常から始まる。
運動会で騎馬戦をしたり大縄跳びをしたりバレーボールをしたり、楽しそうな賑やかな少女たちの姿は今の女の子たちと何も変わらない日常のように見えた。お化粧の話をしていた時は現代を描いているのかと思ったりもしたが、銃の撃ち方の話をしたり兵隊さんの話をしたり、同じようで同じじゃない。
少女たちは戦争が激しくなるとお国のためになりたいと、疎開する家族と離れ戦場に行き負傷した兵たちの看護をする。
「私たち女学生にもお国のためにできることがあるから」と疎開を決意し友達と向かう姿はとても戦場に行く姿には見えず、何か楽しみがある場所に行くかのような足取りでキラキラした姿だった。
看護をしている洞窟が戦争の最前線になるから場所を移動することになる。その時負傷兵を全員は連れていけないから助かる見込みのあるものだけが連れていかれることになる。助かる見込みのない取り残される重症患者にはミルク毒を混ぜたものを飲ませて殺害する。
新しい洞窟に移ってすぐに学徒隊解散が宣言される。戦争が激しくなり洞窟にいることも危ないからと下された判断だった。
グループに分かれ、「夜が明けるまえに洞窟を出て、自分たちで安全な場所を見つけなさい」と言われる。
彼女たちは海を目指すが、その途中で友達が負傷したり耐えられなくなり自決したり、ひとり、またひとりと亡くなっていき、海に着いた時にはひとりしか生き残っていなかった。自分より若い女の子たちが一人ずつ死んでいく姿を見て心が苦しかった。
この物語を書くにあたり詳しい人に話を聞いた。
この時の戦死者20万人のうち沖縄県民は6割にあたる12万人、日本軍は兵力不足を補うために沖縄県民を片っ端から動員させ10代の学生まで動員させたらしい。
ひめゆり学徒隊はその時動員された女学生240人でそのうちの136人の生徒が亡くなったと聞かされた。
私はもちろん戦争の経験はないしテレビやニュースで見聞きしてもやはりどこか違う世界の話のような感覚になるのが正直な気持ちである。しかし、今回この物語に触れて話を聞き、自分がその240人の生徒の1人だったらと思うととても耐えられそうにないと思った。
死ぬと言うことがこんなにも身近に感じられ、生きているのも地獄のような世界で、生きたいと願う人たちの姿を見て”生きる”ということを改めて重く感じさせられる作品だった。
現代の私の悩みなんてなんてちっぽけな悩みなんだろうとも感じた。
そして舞台には常に臨場感があった。役者は常に舞台上にいて、自分の出番ではない時は端で待機していた。
最後の海に向かうシーンでは、ずっと役者が走っていて、最初から最後まで役者一人一人の熱量が高い舞台だった。