【ウェブアクセシビリティ座談会 No.1】インターネットは僕たち障害者にこれだけの可能性を与えてくれた!

2020年11月2日

ウェブアクセシビリティってなに?うん、うん?うん!と聞いているだけでウェブアクセシビリティがわかる座談会はじまるよー!
くらげ
サニーバンク運営のくらげです。本日は「アクセシビリティ座談会」にご参加いただきありがとうございます!
よっこ
くらげさんの同僚で、サニーバンクでアクセシビリティを担当しているよっこです。どうぞよろしくお願いいたします!弊社は「ウェブアクセシビリティ診断」に大変力を入れており、特に様々な種類の障害のある方が様々な視点からウェブアクセシビリティ診断を行うという特色があります。しかし、そもそも「ウェブアクセシビリティ」とはなんなのか?なぜ必要なのか?という基本的なことを説明する場がこれまであまりありませんでした。
くらげ
そういわけなので、 弊社の中で「ウェブアクセシビリティを楽しくお伝えするコンテンツを作りたい」という話が盛り上がり、定期的に私達が座談会を開催して、連載記事を作ることになりました!わかりやすく楽しい記事を作りたい、と考えておりますので、あまり肩肘張らず、ご自由に話していただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします!
よっこ
さて、今回は第1回目なので皆様の自己紹介からお願いいたします。まずはくらげさんからどうぞ!
くらげ
先程も申しましたが、サニーバンク運営スタッフのくらげです。聴覚障害と ADHD の当事者で、この座談会(Zoom で開催中)は人工内耳とUDトークという文字起こしアプリを使って話を聞いています。サニーバンクの運営と並行して、ライター・モノ書きとしての活動もしております。発達障害・精神障害のある妻と二人暮らしです。
寺島
はじめまして。寺島ヒロと申します。発達障害(ASD)のある2人の子どものママで、漫画家です。私自身も強いASD傾向がありますが、現状、生活面で困っていないという事で未診断です。くらげさんとはnoteで対談記事「発達障害あるある対談」を作っていますが、現在は200回を越え更に更新中です。普段はウェブ関係の会社でデザイナーとして働いていてます。この座談会ではアイコンとイラストも担当させていただきます。よろしくお願いします!
伊敷
伊敷政英(いしきまさひで)です。先天性の視覚障害でロービジョンと全盲の間を行ったり来たりしています。サニーバンクでは、主にアクセシビリティ関連のアドバイザーをしています。趣味は音楽で、T-SQUARE、小島麻由美、上原ひろみ、X JAPANなどのファンです。
よっこ
よっこです。株式会社メジャメンツの展開する障害者向けクラウドソーシングサービス「サニーバンク」でアクセシビリティを担当しています。メジャメンツに入る前は流しの公務員(県・市・国の非常勤職員)をやっていました。「みんなで一緒に楽しみたい!」がアクセシビリティのメインテーマです。伊敷アドバイザーに師事し、アクセシビリティ勉強中です。文房具集めが趣味でAB型、一児の母です。
くらげ
さて、基本的な進め方としては、ウェブアクセシビリティについてはあまり詳しくない私と寺島さんが、サニーバンクのウェブアクセシビリティアドバイザーの伊敷さんと、新入社員でアクセシビリティ担当のよっこに、色々と質問して理解を深めて行きたいと思っています。
寺島
あ、私たちが質問していくんですね(笑)では、ストレートに「ウェブアクセシビリティ」とは何なのでしょうか?
くらげ
ASDらしく、前置きなしにドストレートに来ましたね(笑)それに答えられたらこの連載が一瞬で終わってしまいかねません…。
伊敷
いやいや、概要を説明すれば終わってしまう単純な話ではないので、そのぐらいドストレートでいいと思います(笑)
寺島
では、失礼して…。アクセシビリティという単語自体は、スマホの設定にもありますし、あちこちで目にする事はあるんですが、いざ「こういうものです」と説明しようとすると曖昧なところがあります。具体的にはどういうことなんでしょうか?
伊敷
よく聞かれることなんですが、アクセシビリティという言葉はAccessとAbilityに分けることができて、「近づくことができる・アクセスできる」という意味です。そこから派生して「製品やサービスを利用できること」という意味でも使われるようになりました。ウェブアクセシビリティは、ウェブで提供されている情報やサービスのアクセシビリティを指します。正確に言うと「障害の有無やその程度、ユーザーの利用環境に関わらず、ウェブで提供している情報やサービスを利用できるということ」となります。
くらげ
日本の福祉の文脈でアクセシビリティというと、行政が予算をかけて工事も伴うすごく大掛かりなもの、というイメージがありますが、英語で考えればそうでもない言葉なんですね。で、今回のテーマであるウェブアクセシビリティという言葉は最近聞く機会が増えたと思うのですが、今のようにこの言葉が一般的になってきたのはいつ頃なんでしょうか?
伊敷
「ウェブアクセシビリティ」という言葉が一般的かどうかは議論の余地があると思うんですが(笑)詳しくは調べられてはいないんですが、 ウェブ における技術の標準化を進める団体W 3 C(ワールドワイドウェブコンソーシアム)が初めてウェブアクセシビリティに関するガイドラインを作ったのは1999年5月です。ですからウェブアクセシビリティの概念自体はそれより前からあったと考えられます。
くらげ
もう21年も前なんですね!?そのころは、まだほとんどがテキストベースでのやり取りだった時代だった覚えがありますが、当時からウェブアクセシビリティのガイドラインがあることに驚きました。
伊敷
時が経つのは速いですね(笑)それで、ウェブの父と言われるティム・バーナーズ=リーという人が言った
「The power of the Web is in its universality.Access by everyone regardless of disability is an essential aspect.(ウェブの力はその普遍性にあります。 障害に関係なく誰もがアクセスできることはひとつの本質的な側面です。)」
という有名な言葉もあるように、ウェブの本質とは「誰でも情報にアクセスできる」ということなんですよ。ウェブアクセシビリティのことを考えるときにはこの本質を忘れてはいけないんですね。
くらげ
「誰でも情報にアクセスできる」で思い出したんですが、私は1996年にはじめて家にPCが来たんですよね。やっぱり聴覚障害があるとリアルタイムに得られる情報はすごく限られるんですけど、ウェブにアクセスすることでリアルタイムで得られる情報が一気に増えた、というのはとても革命的でした。また、高校2年の頃に携帯電話にメール(SMS)を送受信する機能がついたのですが、これは聴覚障害者でもどこにいてもリアルタイムで連絡が取り合える、という意味で革命が起きましたね。
伊敷
くらげさんの驚きと同じように、視覚障害者にとってもインターネットの登場は画期的でした。私も1997年頃かな、大学2年のときにPCを買ったんですが、当時から画面を拡大したり色反転をするソフトがあったので、それを使ってインターネットを利用していました。また、全盲の人は画面上の文字や画像を見ることができないので、スクリーンリーダーという種類のソフトを使って、画面上の文字やキーボードから入力した文字を合成音声で読み上げさせることによってウェブにアクセスしています。視覚障害者にとってインターネットが画期的だったのは、自分でできることが格段に増えたことです。それまでは何か情報を得ようと思った時、誰かに読んでもらうとか、読んで録音してもらうとか、点字や大きな文字に書き直してもらうなど、第三者の力を借りる必要がありました。インターネットを使うことで「好きなときに好きなだけ情報を入手できる」ようになったんです。また、「プライバシーの問題」の解決にもつながります。「健康」や「お金」などできれば人には話したくないこともありますよね。インターネットが登場する前は、こうした情報を得るためにも誰かの手を借りないといけなかったんですが、インターネットが登場し、健康に関する情報を自分で調べられたり、ネットバンキングを使えるようになったおかげで、「健康」や「お金」を自分で管理することができるようになりました。色んな情報がウェブ上にあることそのものがアクセシビリティの大きな一歩なんですね。
寺島
ASDだから特に思うんですが、誰かに頼む、お願いするってすごくめんどくさいですよね。だから誰かの手を借りずに出来ることが増えるって本当にいいことですよね。例えば、誰かに新聞記事を毎日読んでくれ、というのは機械になら頼んでも怒らないけど、人間に頼むと人によっては怒ってしまいますね(笑)
伊敷
そうそう、「昨日も読んだじゃん!」って喧嘩になる。しかも「新聞によってスタンスが違うから」三紙を読んでくれという人もいるんです(笑)
寺島
確かに大事だけど、読む方は疲れ果ててしまいますね…。そういえば、最近はスマートスピーカーが普及しましたが、視覚障害のある方での利用状況はいかがでしょうか?
伊敷
僕の周りで使う人は増えてますね。「OK,Google」とか「Alexa!」と話しかけるだけで情報を得られるのでパソコンやスマートフォンを操作するよりも簡単なんですよね。
寺島
発達障害の周辺でも活用は広がっているようです。調べものにということはもちろんですが、実は同じことを繰り返し質問をしてくる自閉症の子は多くて、それだけで疲れ果てる家族もいるということがありました。ところが、子どもがスマートスピーカーに話しかけると応答してくれるので、子どもの壁打ちの相手をスマートスピーカーに任せることができる、という事例もあるんです。
くらげ
そういう子どもは「なにか反応があれば満足する」ことがあるので、相手が理解しているかどうかはあまり関係なかったりしますからねぇ。
伊敷
スマートスピーカーを活用することで、親御さんが助かることがあるなんて思いもよりませんでした。スマホアプリの話になりますが、視覚障害者だけでカラオケに行くときは、JOYSOUNDを利用することが多いですね。
よっこ
曲数が多いから、とかそういうことではないんですね?
伊敷
iPhone向けにJOYSOUNDのアプリがあるんです。カラオケの端末とつなぐことでiPhoneから曲を予約したり、キーを調整したりできるんです。iPhoneにはVoiceOverというスクリーンリーダーが標準搭載されているのですが、このJOYSOUNDのアプリはアクセシビリティが確保されているので、VoiceOverで操作することができるんです。ちょっと前まではタッチペンタイプのリモコンも操作できないので目の見える人に同行してもらう必要があったのですが、このアプリがあることではじめて視覚障害者だけで、または一人でカラオケに行けるようになったんですね。本来、視覚障害者向けのサービスではないのですが、結果として視覚障害者にもとても便利なシステムになったと。
PCやスマホの画面読み上げ機能を説明するイラスト: 全盲の人は以前からPCでもスクリーンリーダーを使っています またiPhoneの場合「設定」の中の「アクセシビリティ」からVoiceOverを起動することによって画面上の文字を読み上げることができます。AndroidにもTalkBackという同様の機能があります。
くらげ
聴覚障害もインターネットが普及したことで、一人でできるようになったことはたくさんあります。連絡を取り合うというのは当然なんですが、最近でいうと「Uber eats」ではじめて出前が取れるようになった、という聴覚障害者も多いんですよ。
寺島
発達障害の方でも、電話をかけるのが苦手、電話の音声を聞き取るのが苦手という方が一定数いらっしゃいます。私も電話が苦手なのですが、ネットから注文できるシステムには本当に助けられています。
よっこ
電話しなくていいですからね!でもそうか、電話ができないだけでできないことっていっぱいあるんだ…。
くらげ
最近は警察への通報や救急の要請をメールやウェブサイトからできるようになりましたが、その前は電話ができず連絡手段がなくて泣き寝入りや救急要請が間に合わずに亡くなった聴覚障害者も少なくありませんでした。アクセシビリティの問題は命の問題でもあるんですよね。
よっこ
以前、行政でウェブアクセシビリティの仕事をしていたとき、特に防災や災害の情報を発信するときに「ウェブアクセシビリティが命に関わる」というのはすごく意識していました。でも、なかなか100%完璧に情報をお渡しする、ということは難しかったです。
寺島
完璧とは言わないまでも、少しずつ情報が受け取れる範囲が広がるように改善していく努力が必要だと思います。ところで、くらげさんの周りの聴覚障害のある方々は、かなりインターネットを活用していると聞いていますが、聴覚障害のある方に愛用されているツールみたいなものはありますか?
くらげ
最近びっくりしたのは、ろう者の間で「TikTokに手話でメッセージを撮影してアップし、その URL を LINE や Facebook メッセンジャーで共有する」 という新しいタイプのコミュニケーション方法が開発されていたことです。
伊敷
なんでTikTokなんでしょうか?普通に動画を共有すればいいと思うのですが。
くらげ
手話を母語にするろう者だと「書く」のが苦手な方も少なくありませんので、この方法は結構ご年配のかたも使われているようです。また、動画をLINEなどで直接共有するとデータ通信量が多くなったり、後から見返すのが大変なのでこの方法だと便利なようです。一種の「動画 SNS」的な 使い方なんだろうなと。この話を聞いた時、めちゃくちゃ「頭いいこと考えるなぁ!」と感心しました。
伊敷
それは面白いですね!今まで見てきただけでも、障害があるからと言って特別に配慮されたウェブサイトやアプリを使うのではなくて、JOYSOUNDやUber eatsやTikTokやLINEなど広く使われているアプリを同じように使っているんですね。まずはこのことをウェブに関わるすべての人に知ってほしいと思います。
よっこ
私は主にウェブアクセシビリティを通してしか障害のある方との交流がなかったのですが、今回の話はとても新鮮でした!思っていた以上に障害のある人がインターネットを活用していて、思いもよらぬ形を含めて多様多種な使い方をしているということがわかりました。だからこそ、ウェブアクセシビリティに取り組むことで、もっとみんなで同じものを楽しめるようになるんだと、改めて感じました。
寺島
私もウェブサイトを作る仕事に携わっているのですが、どうしても優先順位としてクライアントの思い描くペルソナに近い人だけをターゲットとしてしまいがちです。企業さんにとってはサイトの改修は安くない買い物ですから慎重になるのもわかるんです。ですが、障害のある人のため、福祉の精神で…とかでなく、そこにいるのは未開拓の客かもしれないという意識を持つと良い方向に進んでいくのかなと思いました。
くらげ
よっこさん、寺島さん、いいまとめをありがとうございます(笑)さて、次回は「企業や行政などがアクセシビリティに取り組む意味・意義」について話し合いたいと思います!よろしくお願いいたします!
伊敷
お疲れさまでした、また次回!
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