【恭加の「 THEATRE for ALL 」感想文】5 ミュージカル「ジパング青春記 ―慶長遣欧使節団出帆―」

2021年12月20日

ジパング青春記―慶長遣欧使節団出帆―の一シーン。5人の男性が演技している。

こんにちは。恭加 (きょうか) です。

恭加がご紹介する、バリアフリー オンライン劇場THEATRE for ALLの作品。お楽しみいただいていますでしょうか?

第5回の今回は、ミュージカル「ジパング青春記―慶長遣欧使節団出帆―」をご紹介します。


ミュージカル「ジパング青春記―慶長遣欧使節団出帆―」


この作品は今から400年前の1611年に慶長の大津波と呼ばれる、東日本大震災と同規模の災害がったこと、その2年後に復興の為に船を作ったという史実に基づいた作品だ。

津波で家族を亡くし、姉の遺体が見つかれば自分も死ぬと考えている若者が、友人やその仲間に出会って成長していく物語である。命の大切さや仲間との絆を描いている。


災害の直後、被災地の人々は地獄のような日々を送っていた。

5000人ほどが犠牲になり、食べるものも無く、生き残っても地獄という環境の中で、

領地をどこよりも豊かな街にしなければ津波で亡くなった人々に顔向けできないと考えた伊達政宗は、被災地を復興させるために船を作って新しい貿易の道を開く政策を目指した。

当時は造船のための木を切って乾燥させるために1年以上を費やしていたが、伊達政宗はこの政策を2年で叶えることができた。

その裏には、伊達政宗の被災された人々への暖かい思いが百姓に伝わり、みんなが船を作るという一つの夢に向かって動くことができたからだ。


主人公のリウタは、生まれてから夢というものがわからず、

夢を持つどころか、震災があった後、自らの命を自分で絶とうとしていた。

そんなリウタが周りの仲間に助けられ、実際に完成した船を見てこの船に乗るという夢ができた。

その夢を友人と一緒に命がけで叶えた。


伊達政宗の「人の心を動かすのは夢だけだ」というセリフが印象的だった。

夢というのは、大人になるにつれて持つことが少なくなり、途中であきらめる人もたくさんいる。

夢を諦めるか悩んでいる人、夢を持つのが怖い人、そんな人たちに見てほしい作品だと思った。

友人の代わりに自分が死のうとするリウタ。

リウタの夢を命がけで叶えようとする友人。

その二人の友情に心が温かくなる。

そんな温かい友情を交わす二人だからこそ、周囲の人々も温かい心を持った人ばかりなのだろうと思った。


この作品は、400年前の震災を題材にしているが、2011年の東日本大震災に思いを重ねた作品になっている。

震災の傷がまだ癒えていない方の背中を少しでも押せるといいと主人公は解説動画で語っていた。


そしてこの作品はミュージカルだが、現代的なジャズやロックなどのダンスではなく、民舞を踊っている。

現代風のダンスではなく民舞を踊っているところが、400年前の当時にふさわしくジパングの見どころだと思った。

踊るシーンでは、見ていて一緒に踊りたくなるような楽しさがあった。


時代物の物語だと登場人物がたくさんいて誰が誰なのか、誰が敵で誰が味方なのかがわからなくなることが多いイメージを持っていた。

だが、この作品は登場人物があまり多くない為か、誰が誰だと途中でわからなくなることもなく、歴史に詳しくなくてもちゃんと理解してみることができた。


また、この作品は日本語字幕と英語字幕に対応しているため聴覚障害者や外国の方にも楽しんでいただける。

しかし、、音声ガイドは対応していない。視覚障害者は踊りのシーンは楽しむことができないと思った。


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