【恭加の「 THEATRE for ALL 」感想文】7 「十人十色の物語~今年90歳になる館長と9人のドラァグクイーン~ 別府ブルーバード劇場」
こんにちは。恭加 (きょうか) です。
恭加がご紹介する、バリアフリー オンライン劇場THEATRE for ALLの作品。
7回目は「十人十色の物語~今年90歳になる館長と9人のドラァグクイーン~ 別府ブルーバード劇場」をご紹介します。
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この作品は、今年90歳になる別府ブルーバード劇場の館長、岡村照館長と5年に渡って映画祭で交流を続けてきたドラァグクイーンとの初めてのイベント企画「十人十色映画祭」のドキュメンタリー映像だ。
館長とドラァグクイーンの対話や、ドラァグクイーンの方々のこれまでの人生を通して、館長とドラァグクイーンがどういう風に交流をしてきたのか、その交流を通して自分らしく生きられる場所、自分らしく楽しめる場所はどういう場所なのかというのを語っている。
これまでのLGBTの映画祭は、前夜祭やアフターパーティーでショーはあったが、映画祭自体は映画を集めて上映するだけだった。
今回の「十人十色映画祭」は、実際にLGBTに関する映画を上映し、その後ドラグクィーン達が自らの立場からトークをするという
トークショーを映画祭に組み込んでいるのが特徴だ。
映画の前後でショーを組み込むことにより、お客さんの映画に対する理解度や、LGBTについての考えも変わってくるのかもしれない。
まず、今回のメインとなるドラァグクイーンとは何かというところから、説明していきたいと思う。
ドラァグクイーンとは女装と間違えられることが多いが、意味合いが異なる。
ドラァグクイーンは、主に一部のゲイの男性達が世界中で表現している女性性をデフォルメしてみせるファッションカルチャーである。
女装はよりフラットにベースが男性性だと思われる人が女装の装いやメイクをすることが女装だとすると、
ドラァグクイーンを定義づけるなら主にゲイ男性の間で楽しまれている女性性をデフォルメして表現するパフォーマンス文化である。
今回は、女性の装いやメイクをすることだけを楽しんでいる方ではなく、実際にショー的な要素を含む女装パフォーマーの為、ドラァグクイーンと呼ばれている。
LGBTは、性の少数者なだけに「自分と違う特別な人」だと考える人も多い。
その為、自分がLGBTだということを隠して生きている方もたくさんいる。
実際にこの作品に出演しているドラァグクイーンの方々も、学生の頃LGBTだということにからかわれ不登校になったり、今でも会社では隠して別の自分でいたりしているなどの
経験をしている人がたくさんいて、まだLGBTが世の中に受け入れられていない現実があるんだと思った。
だが、LGBTだということを隠して生きている方が自分だけじゃない、こんな生き方もある。という視点で見てもらえればLGBTの方の生き方の選択肢も広がるのではないかと思う。
ドラァグクイーンも自分がゲイだということを隠して生きている人がこの映画祭を見てくれたら、自分と同じ人もいるんだと思って頑張れるんじゃないかなって思うと語っていた。
また、ドラァグクイーンが多様性やダイバーシティについても語っていたのがとても印象的だった。
多様性っていうのは、それぞれがありたい姿や自分らしくいられ、否定し合わないでほっときあう、ほっといてくれあう社会であると思う。
ブルーバード劇場も過剰に持ち上げもしないし、排斥もしないし、多様性を育んでいる場所だという。
そんなブルーバード劇場だからこそ、自分を受け入れてくれる、暖かい場所という存在だそうだ。
多様性とは姿かたちが違う人々を一人一人¨認め合う¨社会だと思っていた。
だが、THEATER for ALL の動画では¨ほっときあう世の中¨という考え方が度々出てくる。
ある意味無関心でいる。それこそが、多様性のある社会なのかもしれない。
そしてこの十人十色の物語は字幕が無いオリジナルの他に、日本語字幕、英語字幕、英語字幕+英語音声の4つから選んで視聴することができる。
耳が聞こえない方も視聴することができ、日本語が理解できない外国の方も英語が理解できれば視聴することができる。
また、英語字幕+英語音声もあるため、英語を勉強している方は英語の勉強がてら視聴をすることも可能だ。
国籍を問わず、いろんな方に見てもらえるよう配慮されたドキュメンタリーである。
だが、このドキュメンタリーは映画祭の部分はあまり映っておらず、館長とドラァグクイーンの会話や、インタビューシーンがほとんどだ。
もう少し映画祭のシーンを入れると「十人十色映画祭」の雰囲気を感じられるのではないかと思った。
解説動画では、性に関して、LGBTに関して、当事者がわかりやすく説明をしている。
当事者が実際にどんな悩みがあり、どのように生きているのか学べる作品だ。
その中でも「SOGI」という言葉について語られているところが、とても勉強になった。
自分が男性なのか女性なのかという考え方(性の自認)、自分は女性が好きなのか、男性が好きなのか、
自分の思いがどこに向かっているのか(性的指向)、自分自身の性に纏わる情報のことをSOGIというという説明があった。
LGBTでは、性の少数者「自分ではない特別な人」「変わっている人」という認識の人が多いが「SOGI」はすべての人に当てはまる為、あなたのSOGIはなんですか?と聞くことができれば、LGBTとそうでない人に分ける必要もなくなると、ドラァグクイーンが語っていた。
どうすれば世の中にLGBTがもっと受け入れてもらえるのか。
私たち一人一人のLGBTについて考え方を変えていかなければいけない。
まずは、「SOGI」という言葉を使うというところから始めていきたいと思った。
※LGBT
レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシャル(両性愛者)、トランスジェンダー(性同一性障害を含む、心と出生時の性別が一致しない人)の頭文字を取った言葉です。性的少数者の総称として用いられることが多いです。
※SOGI
Sexual Orientation (性的指向) と Gender Identity (性自認) の頭文字をとっていて、異性愛の人を含むすべての属性を表わします。