【恭加の「 THEATRE for ALL 」感想文】9「描きたい、が止まらない」
こんにちは。恭加 (きょうか) です。
恭加がご紹介する、バリアフリー オンライン劇場THEATRE for ALLの作品。
9回目は、自閉症の少年を追ったドキュメンタリー映画「描きたい、が止まらない」をご紹介します。
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この作品は、絵を描くことが好きな自閉症を持つ1人の少年を追ったドキュメンタリー映画だ。
滋賀県東近江市に住む古久保憲満さん21歳は、広汎性発達障害という障害を持つ。
福祉作業所で働く傍ら、10mの大きさの絵を6年かけて描いている。
憲満さんが描く絵は、アール・ブリュットという正規の美術教育を受けていない人々が
独自に制作した作品の中で、注目を集めている。
この作品では、海外の美術館の館長等が海外から憲満さんの絵を観にきたところから始まり、
実際にシンガポールやスイスの展覧会に招かれ、自閉症と付き合いながら絵を描く、
憲満さんの私生活や絵の活動について映している。
憲満さんが描く絵は線が多く、とても細かい。
10mの絵は、道路、車、飛行機等、街が描かれている。
北朝鮮や中国や社会主義みたいなものを組み合わせて描いていると憲満さんは語っていた。
国民がみんな平等な生活ができて、ちゃんと仕事が与えられて、
必要最低限の生活をみんなが平等にできる、そんな自分の理想、思想を描いているそうだ。
また、憲満さんの絵には気分が明るい時に描いた部分はカラフルで、不安な気持ちが強くなると色が濃くなる。
憲満さんは、絵を通して自分の気持ちを伝えている。
憲満さん自身も言葉にできない事を、唯一自分の描く絵に心の中のものが表されていて、
絵を見てくれるということは自分の気持ちを伝えられるからうれしいと語っていた。
作品を観ていて一番驚いたのが、憲満さんは週5日働いているにもかかわらず、
給料は月に1万円程度だということだ。
日本には最低賃金が自治体によって決まっているが、最低賃金よりも大きく下回っている。
月に1万円で生活していくのは不可能だと思う。
憲満さんも、この映画で何度も両親が亡くなった後のことを心配していた。
自分一人で生活していけるのか、何かあったら誰を頼ればいいのか。
何度も心配しては父に聞いていた。
スーツの袖口のボタンも、父に場所だけ教えてもらい自分で止めていて、自立したいという気持ちが伝わってきた。
また、憲満さんは、神様はいるのか、いたらどういう格好をしているのか、鳥同士は種類が違くても話せるのか、
色んな事を聞いていて、その場その場にあるものや事柄について興味をもつ人だった。
だからこそ、想像させられる絵を描くことができるのだと思った。
憲満さんは自分の障害について、
「『障害があるから何もできない。健常者みたいには出来ない』と国は言っている気がするが、そうでもなく、知能もある程度ちゃんとある」と話していた。
実際に、憲満さんはこの映画を撮影している間に免許を取得した。
憲満さんは、相手に言われたことが理解できなかったり、気落ちが切り替えにくかったり、情緒が不安定になるときがあると話していた。
映画内でも憲満さんがなにか気になったことがあるとイライラしたりしていたが、健常者でもイライラすることはある。
会話の受け答えもしっかりしていて、何より自分というものを持っていた。
この作品は、オリジナルの他に音声ガイドや字幕もある為、目が見えない方や耳の聞こえない方にも見てもらえる作品だが、
音声ガイドの音量がナレーション等の他の音と比べて小さく、音声ガイドが聞き取りづらかった。
ちゃんとテストを受け合格し、障害があっても免許という資格を取れて、「努力したら何でもできるかもしれない」
と話している憲満さんをみていると、障害を持っているからできない、と決めつけるのはよくないと思った。
お父さんも、できることを考えて、できる方向で一緒に考えるような接し方をしていると話していた。
今は障害を持っている方の選択肢が少なく、もっと障害者のできるという気持ちを尊重し、色んな仕事ができ、仕事の幅が広がり、憲満さんの描く絵の様なちゃんと仕事を与えられて、平等に生活ができる世の中になるべきだと思った。