【恭加の「 THEATRE for ALL 」感想文】22「三人姉妹」
こんにちは。恭加 (きょうか) です。
恭加がご紹介する、バリアフリー オンライン劇場THEATRE for ALLの作品。
第22回の今回は三人姉妹をご紹介します。
---------------------------------
この作品は、四代戯曲と呼ばれている、モスクワで120年前に作られた作品を、
演出家の三浦基さんがリメイクした作品だ。
学校の先生をしている長女、
結婚生活に嫌気がさしている次女、
働くことを夢見ている三女。
両親を亡くした三姉妹の日常の話である。
この作品には、誰かヒーローの様な人が出てくることもなければ、
ロミオとジュリエットの様な激しい恋の話でもない。
ロシアの地方都市を舞台に、三人の姉妹の家庭で繰り広げられるドラマのため、
物語自体がとてもドラマ性があるわけでもない。
ヒロインや主役の1人が物語を引っ張っていくわけでもなく、主役はあくまで三人いる。
そのため、登場人物の数も多く、関係性が複雑である。
演出家の三浦さんは、
「三人姉妹みたいな人はどこにでもいて、たくさんいるのかもしれない。
そう考え、誰が誰なのかお客さんにはすぐにわからないような形で三人姉妹を作った」と話す。
確かにこの三人姉妹は、登場人物が舞台上を四つん這いで歩いているシーンから始まり、
入り乱れ、登場人物同士が関わっていく。
劇中も、セリフの言い回しが叫ぶように、まるで何かの怒りをぶつけるような言い回しが多かった。
生きることへの苦しみが表現されていた。
今まで見てきた演劇の演出とは異なり、セリフを発する際は誰かと格闘しながら話している、
より複雑な「三人姉妹」だった。
最初の四つん這いで歩いているシーンで、お互いに顔を見あったら「あぁ」といって手で顔を
覆うシーンがあったが、そこの意味合いがよくわからなかった。
自分が求めていた人ではなかったのか、それとも誰かと目が合うことが恥ずかしいのか、理解できなかった。
一番印象に残ったのは、三女の婚約者である男爵が決闘で殺されたシーンだ。
男爵が殺されたと聞かされた三女は、慌てずに、「わかってた」と何度も繰り返していた。
まるで男爵の死を事前にわかっていて、受け入れているようだった。
普通は現実を受け入れるまでに時間がかかり、乱れ、抜け殻のようになったりするのではないだろうか。
三女はとても強い女性でもあるが、もしかしたら120年前のロシアでは、死というのがもっと身近なものだったのかもしれないとも思った。
そして、オリジナルの他に、音声ガイドと日本語字幕がある。
音声ガイドと日本語字幕は、本編が始まる前に登場人物の説明があり、音声ガイドの方は着ている服の説明もあるため、想像しやすいと思った。
オリジナルだけだと登場人物の説明がなく、三人姉妹を知らない人には関係性を理解するのが難しいと思う。
三人姉妹を初めて見る方は、初めに登場人物の説明をみてから本編をみた方がいいと思った。
また、字幕表記にもルールを設けている。
ミュージカルのように歌うように発語しているときは「♪」、
一音一音区切って発語しているときは「・」、
発語の区切りにはスペース、
叫ぶように、断言するように言い切るときは「!」など、
細かくウール決めて、本編が始まるまえにその説明をしている。
耳が聞こえない方は、字幕で言っている内容は理解できるが、言い回しの表現まで認識できないので、
こうした決まりがあるとわかりやすいし、より作品を楽しめると思った。
この作品は、音声ガイド、日本語字幕、どちらも丁寧に説明されていて、アクセシビリティに配慮された
作品だと思った。