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サニーバンク

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サニーコラム

イメージ:コラム

【ウェブアクセシビリティ座談会 No.2】命を守り、個人情報を守り、そしてライブに行く。自分で。

2021年01月15日

くらげ
サニーバンクのくらげです。聴覚障害と ADHD の当事者です。この連載はアクセシビリティとはなにかをお話しながら理解を深めていこうという企画です。前回に引き続き、4人でアクセシビリティについて話し合っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。まず、自己紹介からいいでしょうか?
よっこ
サニーバンクのアクセシビリティ担当のよっこです。前職では自治体広報担当課でウェブアクセシビリティ向上に取り組んでいました。「みんなで一緒に楽しみたい!」がアクセシビリティのメインテーマです。
伊敷
伊敷政英(いしきまさひで)です。先天性の視覚障害でロービジョンと全盲の間を行ったり来たりしています。サニーバンクでは、主にアクセシビリティ関連のアドバイザーをしています。趣味は音楽で、T-SQUARE、小島麻由美、上原ひろみ、X JAPANなどのファンです。
寺島
漫画家の寺島です。発達障害のある2人の子どものママで自身も強いASD傾向があります。このコラムではイラストやアイコンも担当しています。普段はWeb制作会社でパートをしているので、この中では唯一の制作側という事になりますね。よろしくお願いします。

公共機関におけるウェブアクセシビリティの取り組みの重要性

新型コロナウイルス関連の話

寺島
アクセシビリティといえば、ずっと気になっていることがあるんです。2020年に入ってから、新型コロナウイルスの流行に関係して様々な情報がネット上に大量に飛び交うようになりましたよね。視覚障害や聴覚障害がある方は、情報収集などの面で困ることが増えたりはしていないんでしょうか?
伊敷
視覚障害関連だと、緊急事態宣言が出されたくらいの時期に、厚生労働省がLINEを使って健康状態に関するアンケートを行っていたんですよ。覚えていますか?
寺島
ああ、何回かLINEにアンケートが来ていました。私も回答しましたよ
よっこ
「新型コロナ対策のための全国調査」ですね。
伊敷
そうですね。僕はiPhoneのVoiceOverを使ってアンケートに回答しようとしたのですが、そのアンケートは最初はアクセシビリティ上の問題があって、設問や回答を全く読み上げなかったので回答することができませんでした。それで、iPhoneで回答することは諦めて、パソコンで回答できないか検索したところ、厚生労働省のウェブサイトから回答することができたんですが、すごく不便でしたね。
くらげ
LINEで質問が回ってきたのにLINEで回答が完結できないんですね。そりゃ、回答を諦める人も多かったでしょうねぇ。
伊敷
同じページに「問い合わせフォーム」があったので、「スクリーンリーダーを使ってLINEをしている視覚障害者は今回のアンケートは回答できません」と改善要望を出しました。他にも同じ要望を送った方が大勢いたみたいで、少しずつ改善されて、3、4回目からわりとアンケートに回答できるようになりました。
寺島
そうだったんですね!それはとてもいい話だと思います。現場では要望がないと動けないという部分もありますので、当事者が声を上げて改善要望を送るってとても大事なことですよ。
よっこ
使えない人がいることに気づいていない、ということもありますので、使えないと伝えていただけるのは、現場にとってもありがたいことだと思います。
よっこ
聴覚障害関係では、ニュースを見ていると記者会見などで手話通訳者が通訳をしているところを見ることが増えましたが、東京都知事の会見にはUDトークでリアルタイム字幕を提供していますよね。
くらげ
東京都公式動画チャンネルで放送している都知事会見では、都が公式に「UDトーク」による字幕を提供していますね。UDトークとは音声を自動的に日本語のテキストに変換するアプリで、私もこのミーティングにも使っています。といっても、どうしても聞き取れないところや誤認識がでてきますので、人の手による修正が不可欠なのですが、字幕提供を開始した当初は、有志ボランティアが遠隔操作で修正作業を行っていたようです。
伊敷
東京都の新型コロナウィルス感染症対策サイトも、有志によって改善が行われていましたよね。僕もロービジョン当事者として、陽性者数のグラフの色などについてフィードバックしました。このように行政と市民が連携して改善を進めることは、事例の一つとしてはいいと思うのですが、他の自治体はどうだったんでしょうね?アクセシビリティに関するフィードバックを適切にできる人材や、改善できる技術力を持った人材が、日本中のどこにでもいるとは限らないですよね。公的機関が発信する情報のアクセシビリティが、技術力を持った有志の有無によって左右されてしまうのはよくないことだと思います。ここはやはり、公的機関が責任を持ってアクセシビリティに取り組んで欲しいです。

東日本大震災の話

くらげ
聴覚障害関係だとアクセシビリティのことを「情報保障」ということが多いんですが、自分が行政などの公的機関が情報保障を行うことはとても大事だと感じるきっかけになったのは東日本大震災のときです。津波が襲ってきた地域にいた聴覚障害者がサイレンなどが聞こえず命を落としたケースが相次いだそうです。NHKの調査によるとその地区にいた住民の死亡率は0.78%だったのですが、聴覚障害者に限ると1.96%でした。また、被災地の聴覚障害者が全く情報を得られずに数日間食料がもらえなかった、という話も聞いています。
伊敷
視覚障害がある場合、災害が起きた時にどこに避難すれば安全か、またそこへのルートはどうなっているかがわからないんです。しかも、こういう情報が刻々と変化していく。僕もそうですが、災害時に避難所へ避難するのではなく、自宅に残るという選択をする視覚障害者は割と多いようです。
よっこ
確かに、自治体にいた頃はハザードマップや避難所情報をどうアクセシブルにしたらよいのかすごく悩みました。自治体のウェブサイトではこれらの情報を紙やPDFにして提供する場合が多いと思うのですが、PDFだとスクリーンリーダーで読めない可能性もあるので、できる限りウェブページでテキスト情報としても提供できるようにと考えていました。避難所情報や防災関連のハンドブックを紙媒体やPDFファイルだけでなく、テキストに起こしてウェブサイトで提供するなど、いろいろ工夫はしていたのですが、地図の情報を見えない方にどうやったら伝えられるのかというのは難しいですね。
伊敷
市内の避難所の所在地や対象地域などがアクセシブルな形で掲載されているだけでも助かる視覚障害者は多いと思います。地図をどうやって伝えるか、というのはこれからも研究しなきゃいけないテーマだと思います。サニーバンクにはそれこそ様々な障害のある方がいますので、チームを組んで研究するのもいいかもしれませんね。予算や人材、技術など、さまざまな課題があると思いますが、公的機関が発信する情報は一次情報として、可能な限りアクセシブルであって欲しいです。「すべての人が等しく情報を得られる」ということが当たり前になってほしいです。

民間企業がウェブアクセシビリティに取り組むことの意味

サービスの公共性とアクセシビリティ

伊敷
そういえば、東日本大震災の直後、計画停電がありましたよね。
くらげ
当時は千葉県に住んでいて、ちょうど対象地域になって停電したんですよね。もう、本当に街中が真っ暗で、もう何もできないので近所のバーで飲んでました(笑)。
伊敷
飲んでいたんですか(笑)。あの時、東京電力が計画停電の対象地域やスケジュールなどをウェブサイトにアップしていたのですが、それがアクセシブルでないPDFだったんです。紙の資料をスキャンして作られたものだったと思うのですが、このようにして作られたPDFはスクリーンリーダーで適切に読み上げることができません。そのため、ある視覚障害者がTwitterで「自分が住んでいる地域はいつ停電になるのか教えてください」とつぶやいていました。そのツイートを見た聴覚障害のあるフォロワーさんが「住所など詳しく教えてください」とリプライして、ダイレクトメッセージでやりとりして計画停電のスケジュールを知ることができました。
よっこ
優しいフォロワーさんがいてよかったですね。
伊敷
でもですよ、今回の話はお互いがいい人で適切にやり取りができたのでよかったですが、個人情報のことを考えるとダイレクトメッセージとはいえ、住所をやりとりするのはよくないですね。悪意のあるフォロワーさんだった場合、事件に巻き込まれる可能性もあります。今回は東電が出した一次情報がアクセシブルじゃなかったために、この視覚障害者はTwitterで聞こうとしました。このことを考えると、一次情報がアクセシブルであることがすごく大事だと思います。
よっこ
そうですね、もし悪意あるフォロワーさんだったら重大な事件になっていたかもしれないですね。東日本大震災に限らず、大きな事件や災害が起こるとSNSではデマが流れますよね。デマでなくても、災害情報は刻々と変わっていくので、その情報が、最新の正しい情報なのか、というのも心配になります。信頼できる情報かどうかは情報の発信元を確認すると思うのですが、一次情報がアクセシブルでないと確認できずに困りますね。
くらげ
最近は公的機関もSNSや動画配信を積極的にやっていますよね。
伊敷
そうですね。冒頭でご紹介した厚労省のアンケートもLINEを使って行われていますし、市区町村のレベルでもTwitterやLINEの公式アカウントを運用しているところもたくさんあります。また、YouTubeやTikTokなどの動画配信プラットフォームを活用しているところもありますね。こうしたSNSや動画配信サービスを運営している企業でも、サービスのアクセシビリティ改善に取り組んで欲しいですね。
寺島
災害が起こると「こういう時のために近所付き合いを」とかよく聞くんですけど、システムとしては第三者の善意を期待することが組み込まれているのはおかしいと思います。発達障害のある人は人に頼むのが苦手という傾向があるし、第三者の善意によって情報を得るのではなく、自分自身で情報を得られることがとても大事だなと感じます。

日常生活に密着しているのは民間企業のウェブサイト

くらげ
障害があると「人の善意」に頼らざるを得ないときが結構多いんですよね。でも、常に善意に頼るってすごく危険だし、善意を受けられるように「お行儀よく」しておかなきゃいけないんですよ。それが面倒くさいんですよね(笑)。
伊敷
もちろん、ボランティアの方々には感謝しても感謝しきれないんですが、でも、前回「自分で出来ることが多いほうがいい」という話をしましたけど、それは行政関係や命に関することだけではないんです。日常生活では検索サイトやショッピングサイト、好きなアーティストのウェブサイトなどもよくみますよね。こうした民間企業が運営しているウェブサイトにもアクセシビリティは必要なんですよ。
よっこ
確かに、行政のサイトよりそういうサイトの方がよく見てるかも。そういえば海外では、2019年年明けすぐごろに、歌手のビヨンセさんの公式ウェブサイトがアクセシブルではないとして訴えられたことがありましたよね。
伊敷
そうそう「歌手のビヨンセのウェブサイトに視覚障害のある女性ファンがアクセスしたけど、掲載されている写真に代替テキストがなくてどんな写真なのかわからないなどと訴訟を起こした」というニュースがYahoo!ニュースで配信されたんです。僕はこれ自体は事務所側が対応しなかったから訴訟になったんだろうと納得したんですが、Yahoo!ニュースのコメント欄は率直に言ってすごく悲しいコメントが並んでいて、ショックを受けました。
くらげ
私もその記事のコメント欄を見ましたけど「ほんとのファンだったら訴訟なんか起こさないよね」とか「彼女には友達はいないんだろうか(友達に見て貰えばいいじゃん)」とかの批判的な意見にとどまらず、視覚障害者に対する差別や誹謗中傷も並んでいましたね…。
伊敷
僕は2003年くらいからアクセシビリティの仕事をしているのですが、17年もこの仕事をやっていても、日本人の視覚障害者に対する意識はまだこの段階なんだなと、力不足を痛感しました。視覚障害の有無に関わらず、ビヨンセのファンなら、写真に写っている彼女がどんな衣装なのか、どんな表情をしているのか知りたいと思うのは自然なことだと思います。それを知るすべがないとしたら…想像してみてください。
寺島
確かに、それはとても悲しいですね。しかし、そういったコンテンツを「見る」ことができる、「聴く」ことができるのが日常の人からすると、なかなか思い当たらないところかもしれません。
よっこ
日本でも多くのミュージシャンやアーティストがウェブサイトで情報発信していますよね。伊敷さんも音楽が趣味とのことで、好きなアーティストのライブとか行かれているようですが、チケットとかどうしてるんですか?
伊敷
自己紹介にあるように、T-SQUARE、小島麻由美、X JAPAN、あとももクロのコンサートに行ったことがあります。自分でネットでチケットを買ったのはももクロだけですが、その頃は今より視力があったので、スクリーンリーダーなどは使わずに購入できたんです。でも今はスクリーンリーダーを使っているので、チケットサイトのアクセシビリティも気になります。もしアクセシブルでない場合、座席の指定やクレジットカード情報の入力などを誰かに手伝ってもらわないといけませんね。よっこさんお願いしていいですか。
よっこ
座席の指定はいいけど、クレジットカード情報を代理で入力するのはちょっと抵抗があるかも。
伊敷
僕もよっこさんを信頼してないわけじゃないけど、さすがにクレジットカードの情報は頼む方も頼まれる方もちょっと…という感じですよね。
よっこ
そこがネックになって、大好きなアーティストのコンサートに行けないなんて人もいるかもしれないですね。
寺島
おそらく、コンサートを開催する企業の側はそういう人のことを無視しても問題のない人数と過小評価しているのでしょう。しかし、アーティストは自分の活動を出来るだけ多くの人に届けたいと思っているはずですし、売り上げさえあればいいというものではないはずですよね。アーティスト活動に限らず、民間企業でも必要な人に必要な情報を届けるという事にもっと意識的になってほしいと思います。ウェブアクセシビリティに取り組むことで、見込み客の他に潜在顧客の掘り起こしにも可能性が広がります。特に今後は新型コロナ感染症の影響もあり、自分の足で歩いて会場に来てお金を使ってくれるという人ばかりを相手にしていては、大きな「機会損失」になりかねませんから、多様な関わり方をする消費者に対応していくことが大変重要ですよね。

伊敷さんとくらげさんのドヤ顔のイラスト:伊敷「深夜0時受付開始のチケット予約、でもよっこさん寝てるよな…ライブ行くのやめちゃおうかな。」くらげ「お願いしたいんだけど、なかなかうまく寺島さんに伝えらないなぁ…。」でもアクセシビリティがあれば、自分でできる!よっこ&寺島も喜んでいる。

もっと広がってほしいウェブアクセシビリティ

くらげ
アクセシビリティへの意識はそもそも日本における障害者の「差別」という問題とつながっているんですよね。アメリカはADA(障害を持つアメリカ人法)で比較的容易に障害者への差別だと感じることを裁判所に訴えることが出来るのですが、日本ではまだまだそういう段階ではないですよね。
寺島
ううん、障害のある方のためにあえて何かしようとは思わないと…そこに差別の意識が…。
伊敷
海外ではウェブアクセシビリティの確保を法律で義務化する動きが進んでいますが、日本では直接的にアクセシビリティの確保を求める法律はまだありません。近いところだと障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)」というのがあって、公的機関に対しては「合理的配慮の提供」を義務化していますが、罰則はありませんし、民間企業に対しては努力義務に止まっています。
よっこ
「合理的配慮の提供」って、たとえば障害者から意見や要望があった場合に、過度な負担にならない範囲で対応しましょうってことだと思うんですけど、確か、条例で民間企業へも「義務」とする自治体があったり、民間企業も義務化すべきという動きがあるようですが、そっか、罰則はないですもんね。
伊敷
そうなんです。罰則はないんですよね。じゃあ日本でも法律で義務化して罰則を設ければいいのかというと、僕はまだ迷いがあります。あまり急いでこの議論を進めてしまうと、遺恨を残しやすいんじゃないかなと思うんです。でもなぁ、17年アクセシビリティをやってきて、ビヨンセのニュースにああいうコメントが並ぶ状態だと、もっと強いメッセージを出さないといけないのかなぁ…
よっこ
法律で決まっているからとか、やらないと罰則があるからという理由でアクセシビリティに取り組むというより、障害のあるなし関係なく、みんながアクセスできて、みんなで一緒に楽しめるように!ってなるといいですよね。そういった思いでアクセシビリティに取り組んでいる現場の人たちは増えていると感じています。
伊敷
ここ数年のアクセシビリティ業界の盛り上がりは現場のフロントエンドエンジニアやデザイナーが「自分たちが開発しているウェブサイトやウェブサービスのクオリティを向上させたい」という視点から発信していることが多いんです。少しずつ仲間に呼びかけて巻き込んで、ウェブアクセシビリティに興味を持ってもらって、勉強会を開催して、草の根的に広めている状態です。すごく大事なことですし、確実にウェブアクセシビリティが広がっていくと思います。
よっこ
今回改めて、公的機関がウェブアクセシビリティに取り組むことがいかに重要か考えさせられました。私がいた自治体では担当職員さんの理解もあり、制約のある中でもできる限りアクセシブルに情報提供できるように取り組んでいましたが、住民の命や財産を守るためにも、信頼できる情報をしっかり提供できるようにすることが大事なのだと改めて思ったし、そういう取り組みや意識が多くの公的機関にも広がってほしいです。
寺島
民間企業の方にも、アクセシブルなサイトを提供することで、障害者が自分でできることが増えるし、消費活動も広がるということを知ってほしいですね。うちは小さな販売サイトだから…と思うかもしれませんが、顧客が少ない企業さんこそ障害のある方を潜在顧客とできれば大きなインパクトになると思うんです。小回りの利く民間企業だからこそできる、ニッチで多様なサービスが出てくることを期待しています。私も考えます!(笑)
くらげ
さて、今回は「アクセシビリティを整備することがどれだけ大事なことか」ということがかなり出てきましたが、法律だから義務的に行うというよりも、「障害のある方の命を守る」とか「事件に巻き込まれないようにする」とか「障害者の購買意欲に応える」とか、そういう「ポジティブ」な意識をもって自発的に取り組んでほしい、ということだったかと思います。私も改めて「アクセシビリティ」というものが「ついで」で行うことではないな、ということを感じました。ありがとうございました。さて、次回は「アクセシビリティ よくある疑問や勘違い」について話し合いたいと思います!お疲れさまでした!
よっこ
お疲れさまでした!

これまでの座談会

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