【寺島ヒロアドバイザーコラム】3「自閉症を持って生まれた息子との日々」 

2022年11月14日

お兄ちゃんはASD

お久しぶりです、寺島ヒロです。

前回のコラムで、わたしの夫がADHD(注意欠如・多動症)であること、そのことに45歳まで気が付かなかったことを書かせていただきました。今回は私と夫の間に生まれた息子、タケルの障害がわかったときのことを書いていきたいと思います。息子についてはあちこちで書かせていただいているので情報が重複するのはお許しください。


我が家の長男、タケルが生まれたのは2000年。まだ発達障害はおろか、アスペルガー症候群という言葉も一般には知られていなかった頃です。


私自身も、「この子はどうも寝つきが悪いし、音に敏感なところがあるなあ…。」と、感じてはいたものの、幼いころは息子に障害があるとは思っていませんでした。3歳ごろには文字を読み書きできたタケル。好奇心旺盛で、気になったことは何時間も熱中して探求します。大人びた丁寧な言葉使いをし、一度言われたことは忘れません。ゲームのネット対戦では大人を負かすこともしばしばでした。むしろ「この子は天才なのでは!?」と思ったほどです。


しかし、今思えば、このころ既に「入眠の困難」「音についての過敏」「興味の対象に対する過集中」「興味のあることに対する反復的な行動(同じゲームを何度も...小さい子どもにはありえないような回数練習する、だから勝てる)」「会話のパターンが周囲の大人の完コピであること」など...自閉症の子どもによくみられる特徴が表れていました。


4歳で幼稚園に通うようになると、他の子どもと一緒に行動できない、同じ年齢の子どもに比べて明らかに落ち着きがないという事がわかってきました。とにかくもうひと時もじっとしていないのです。起きた瞬間から絵本、テレビ、ゲーム、工作と目まぐるしく動いています。儀式のようにやることが決まっているらしく、制止されるとこの世の終わりのように泣きわめき、怒ります。


身体の多動もひどく、外に出れば常に猛ダッシュなので、ついていく親はいつもへとへと。先詰めで体力を使い切るので、出かけた先で糸が切れたように倒れ伏して「だっこでおうち連れてって...」と泣きだすこともよくありました。幼稚園でも、力尽きて倒れてぐずりだし「お迎えに来てください」と呼び出されたことが何度もあります。普通のぐずりではなく、身体がぐにゃぐにゃに崩れて自分の意志で立てなくなるのです。


私は学生の時に発達心理学と青年心理学の授業を取っていたので、この頃になると「これは自閉症に似ているな?」と感じてはいました。しかし、自閉症の中に喋れるタイプがあると知らなかったので確信は持てないまま精神科のある病院を探して受診させることにしました。しかし、当時は子どもを診てくれる精神科を探すのは難しく、またちょうど、もう一人子どもが生まれて育児と仕事で手いっぱいになったため、受診を果たすことができませんでした。


小学校に上がると、教室での立ち歩き、集団行動が全く出来ない、自分の興味のあることを話し始めると止まらないなどの問題行動が顕著になってきました。先生が注意すると一応聞いていて、言葉で受け応えもするのですが、結局自分の足りたいことを優先してしまうのです。授業中に何か些細なことでワンワン泣き始めて、1時間以上も倒れ伏して泣き続けるということもありました。


そんな息子の様子に「何かある!」と、私も、もちろん1年生の担任の先生方も思っていました。しかし結局「何か」の正体はわからないままでした。


発達障害の一種であるアスペルガー症候群(現在の名称はASD:自閉スペクトラム症)だと判明したのは、それから2年経ってから、8歳の時に参加した発達相談会で、です。


2006年に障害者自立支援法が施行されたのをきっかけに、私たちが住んでいた地域の地方自治体でも相談会が行われることになり、子どもの発達が専門の医師から無料で診察をしてもらえることになったのです。その相談会に参加したところ、担当医師に「アスペルガー症候群に大変近い印象」と言われたので、後日2回に分けて療育センターで詳しい検査を受けました。結果はやはりアスペルガー症候群。お医者さんの印象はドンピシャ、当たっていました。


現在息子は22歳。小学校通級指導教室を経て、中・高校では通常級へ進み、今では大学生になりました。大学では「障害学生」として、大学内の学生支援室のサポートを受けています。これまで大変なこともありましたが、なんとか成人し、日々元気に暮らしています。


これまでの「大変なこと」については、また稿を改めて書かせていただきますね。


※なお、今回挙げさせていただいた息子の行動は、あくまで私が違和感を感じたところです。お子さんにこのような行動があれば直ちに発達障害があるというわけではありません。個々の事例については専門の医師、又は機関にご相談ください。

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