【ウェブアクセシビリティ座談会 No.7】音が鳴らない音響式信号って?

2021年11月9日

ウェブアクセシビリティってなに?うん、うん?うん!と聞いているだけでウェブアクセシビリティがわかる座談会第7回
くらげ
サニーバンクアドバイザーのくらげです。聴覚障害と ADHD の当事者です。この連載はアクセシビリティとはなにかをお話しながら理解を深めていこうという企画です。今回もまず、自己紹介からいいでしょうか?
よっこ
サニーバンクスタッフのよっこです。主にアクセシビリティ関連の案件を担当しています。そっか、くらげさんはサニーバンクのアドバイザーに就任されたんですよね!くらげさんとともに寺島さんも!
寺島
はい、そうなんです。くらげさんとともにサニーバンクのアドバイザーに就任いたしました、寺島です。発達障害のある2人の子どものママで自身も強いASD傾向があります。漫画家をやっておりまして、このコラムではイラストやアイコンも担当しています。
伊敷
伊敷政英(いしきまさひで)です。先天性の視覚障害当事者で、サニーバンクでは主にアクセシビリティ関連のアドバイザーをしています。くらげさん、寺島さん、アドバイザーとしてもどうぞよろしくお願いします!

突然ですが、音が鳴らない音響式信号の話

よっこ
少し前に参加したイベントで、音響式信号の話題が出ていました。場所によっては夜とか朝とか音が鳴らないみたいですね。
伊敷
視覚障害者が横断歩道を安全にわたれるように「ピヨピヨ」とか「カッコー」っていう音がなる信号ですね。確かに近隣住民や町内会から「うるさい」とか「誰も歩いてないのに深夜早朝も音を流す必要があるのか」などの意見が寄せられて、その結果夜8時ごろから翌朝7時ごろまでは音が鳴らないように設定されてしまうことはあります。音を鳴らさない時間帯は地域によって違いがありますが。
よっこ
そうなんですね。でも音が鳴らない時間帯にそこを通らないといけない視覚障害者もいますよね。
伊敷
はい。仕事の帰りが夜9時とか10時になることは普通に考えられますし、朝散歩したいとかもありますよね。なので24時間ずっと音が鳴るのではなく、利用者がボタンを押したときだけ音が鳴るような信号もあります。ただしこれも夜から朝にかけてはボタンを押しても音が鳴らないように設定されているものも多いのですが。 2018年12月には、早朝の横断歩道で視覚障害者が車にはねられるという事故も起きています。音響式信号機は設置されていたものの、事故が起きた時間帯は音が鳴らないようになっていました。(参考リンク → 視覚障害者はねられ死亡 東京の横断歩道で | 毎日新聞(有料記事です。読めない人ごめんなさい。)新しいウィンドウで開く
24時間音が鳴り続ける信号機は確かに近隣の方にとってつらいかもしれませんが、先ほどの押しボタン式は残してほしいし夜や朝の時間帯も音が出るようにしてほしいと思います。

だけど音が困る人もいるから・・・

寺島
しかし、音でお知らせするタイプの支援機器は、他の障害のある方にとっては不自由を感じる場合もあります。うちの息子は発達障害があるのですが、不意に踏切の「カンカン」という音がなると体が硬直して動けなくなることがあるんです。特に背後から音が鳴るとほんとにそこから一歩も動けなくなる。そういうときは私が迎えに行きます。だから、街中やテレビから急な音がすることはできるだけ避けたいんですよね。
伊敷
なるほど、それは考えたことがなかったな…
寺島
発達障害があって感覚過敏がある人は音響式信号でも驚いてしまうので、その道を通りたくないとか、音が出ている時間は避けて通ろうという人はいると思います。単にうるさいとか気に障るというだけではなく、そういう問題があることも考える必要があるのではないでしょうか。
伊敷
そういえば。2018年の事故以降、視覚障害者に信号の状態を伝えるスマホアプリの開発が警察を中心に進められていますね。(参考リンク → スマホで信号の色伝達 視覚障害者へ横断支援 警察庁:日本経済新聞新しいウィンドウで開く
伝達の精度やスマートフォンを持っていない視覚障害者へのフォローなど課題はありますが、こういう技術が発達することによって時間帯によらず安全に横断歩道を渡れるようになるのではないかと期待しています。発達障害や聴覚過敏のある人にとっても、大きな音に驚いて動けなくなるようなことが減るのではないでしょうか。
視覚障害者向け横断支援アプリのイメージ:白状を持った視覚障害のある男性が胸ポケットにスマートフォンを入れて、骨伝導ワイヤレスヘッドホンでその音を聞いています。信号についている通信機器から信号の情報をスマートフォンに送信します。スマートフォンから音声や振動で信号の情報を受け取ることができます。「ピュワピュワ」という音の出るタイプの信号が苦手な人もいるので、より便利になると期待されています。



上濱
突然ですが、メジャメンツ代表の上濱です!今、伊敷さんが紹介していたスマホアプリは「信GO!」という名前で、現在は東京だと高田馬場駅前の交差点で実証実験を行っています。私も触ってみましたが、まだまだ改良の余地は多方面にあるものの未来を感じるものでした。
これ以外にも横断歩道の手前にポールを置いて、そこに手元で見える信号や点字が振動して分かるような仕組みを組み込んでいる信号などもあります。 (高齢者・視覚障がい者用LED付音響装置|交通信号 |製品情報 |電材部品の開発メーカー、篠原電機株式会社新しいウィンドウで開く
海外では上から指向性の高いスピーカーで鳴らして信号の真下だけ聞こえるようにしているものや、地面に信号を組み込んで地面が光ったり振動することで歩きスマホの人も間違えないようにしている国もあるようです。
各社がいろいろと製品を競いあっているので、これからもっと使いやすい製品が出てくるものと思われます。
ただ、ここには問題も潜んでいます。
各信号機メーカーが新しい技術を競い合ってる状況なので、どの信号にどの技術が使われているのか分からない問題も発生しています。また、これらの導入の予算は都道府県それぞれで確保しているため、都道府県で条例などもバラバラです。今後の課題としては、視覚障害者がどこにどの信号が設置されてるか把握しなくても使えるように共通の仕様を作って、信号機メーカーや都道府県が足並み揃えて進める必要があると考えています。



多くの人にとって快適になるように

よっこ
サニーバンクのウェブアクセシビリティ基礎診断でも、ある障害のある人からは「ここがいい」とレポートされているところが、別の障害のある人からは「困るので改善してほしい」とレポートされることがあります。そういうのをじゃあどうすれば解決できるのか、よりよくなるのか考えてきました。特定の障害に偏った対策をするのではなくて、それが別の人にとってはどうなのかも考えて、多くの人にとって快適になるような配慮や仕組みができるといいですね。



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